二十四節気は春分(しゅんぶん3月20日)を迎え、昼と夜の時間の長さがほぼ同じになり、この日を境に昼間の時間が長くなります。春分の日の前後7日間は春の彼岸です。「暑さ寒さも彼岸まで」と言われるように、寒い日があっても、冬の最中のような寒さではなく、少しずつ穏やかさが増し始めます。
七十二候は、春の季語ともなる、スズメたちが冬を越え巣作りを始める頃、雀始巣(すずめはじめてすくう3月20日~24日頃)、サクラが咲き始め、桜色の景色を愛でる頃、桜始開(さくらはじめてひらく3月25日~29日頃)、大気が不安定になり、遠くに春の雷、春雷(しゅんらい)を聴く頃、雷乃発声(かみなりすなわちこえをはっす3月30日~4月3日頃)と続きます。いよいよ春の種も音をたてて芽吹き、咲きほころび、動き出す様子を表す候となります。
この時期は、外気の温度差が大きく、汗ばむような陽気の日もあれば、冷たい春雨が降り花冷えとなる日もあります。この雨は菜種梅雨とも言われ、雨や曇りが続いたり、寒暖差がはげしかったりと、気づかぬうちに心身に影響を及ぼしかねません。衣類や寝具は温度調整ができるようなものを選び、体調を崩さないよう注意が必要です。
外出には温度調整ができる薄物の上衣やストールなどを上手に利用し、寝間着は通気性の良い、就寝時の体温調節に妨げにならない素材をえらび、夜間の温度が低くなる時に身体を冷やさないようにしましょう。
季節の変わり目の環境変化による身体への負担は、たっぷりの快適睡眠と旬の食材の食事で蓄積しないようにしたいものです。
3月後半に漁が解禁になるシラスはお勧め。体を温めて、胃腸の働きを高めます。また、エネルギー不足を補い、疲労を回復する作用もあります。そして実は、鶏卵もこの時期が旬となります。産卵数が減少する冬に母体内で熟成されて栄養価も高く、美味しくなるそうです。
そこで、我が家もこの時期定番の、シラスの卵とじはいかがでしょう?薄めの出汁で、三つ葉を添えて。ぜひお試しあれ。
春の鳥達は本当にうれしそう。我が家の庭は今年も賑やかです。キンモクセイの繁った葉の中では、朝早くから雀たちが賑やかにさえずり合い、モクレンの木では、今年も落花生リースにモズやメジロやヒヨドリが集まっています。そんな鳥たちの声に耳を澄ませていると、思わずにっこりしてしまいます。春が来たなー、って。
そして、そんな気分は、アントニオ・ヴィヴァルディ(Antonio Lucio Vivaldi1678-1741イタリア)作曲、ヴァイオリン協奏曲「四季(Le Quattro Stagioni)」から「春(La Primavera)」です。みなさま、きっと聞いたことがある曲。
この曲は1725年に発表された、ヴァイオリン協奏曲集、12曲からなる「和声と創意の試み」という作品の中から、第1曲「春」、第2曲「夏」、第3曲「秋」、第4曲「冬」、これ4曲の名称です。実はヴィヴァルディ自身はこれら4曲を「四季」と名付けた史実はないそうです。ただ、この4曲には各楽章にその季節を表現するソネットが書きこまれていて、それらがヴィヴァルディ自身のものではないかと言われています。
この1曲目「春」が、まさに心待ちにしていた、色彩に満ちた春の自然そのものが音楽になったような曲です。ヴィヴァルディの自然やその変化に伴う人の感情を音楽で描写するという、画期的な作品です。明るく歓びに満ちたその空気感は春が訪れた喜びや自然の躍動感を感じさせるのです。
曲の始めは小鳥たちのさえずりが表現されています。賑やかでうれしそうな鳥たちがヴァイオリンの掛け合いで続きます。まわりには穏やかな風や小川のせせらぎも聴こえます。目をつぶれば、春の土手沿いの爽やかな、若い緑豊かな大地にはピンクや黄色、白や薄紫の花が咲き乱れ、少し霞みがかった青空が見えるのです。利根川沿いの景色だったりしますが…。続く、2楽章はゆったりと平和で穏やかな田園風景、3楽章は活発な春の生命力が感じられます。
まるで、音が見えるよう。
始めて生演奏を聴いたのは、小学生のころ。先輩たちの演奏にうっとりしたことを憶えています。ソロ演奏の鳥達は少々難しいのですが、合奏では何度か演奏したことがあります。弾いていても、どんなふうに伝えたらいいかしら、とワクワクする曲です。
300年も前の人も、春の歓びは謳歌せずにはいられないのですね。私たちが感じるものと一緒です。きっとヴィヴァルディも春が大好きだったのだろうな、と思うのです。
明日も鳥たちの合唱を楽しみに、そろそろ眠りにつこうと思います。
今日も眠りにつくとき、目覚めるとき、素敵な音が聴こえますように。みなさま、ぐっすりお休みください
染谷雅子
< 参考 >
「春」ソネットの要約 Wikipedia参照
第1楽章 アレグロ
春がやってきた。小鳥は喜び囀りながら祝っている。小川がせせらぎ、風が優しく撫でる。春を告げる雷が轟音を立て黒い雲が空を覆う、そして嵐は去り小鳥は甲高い声で歌う。
第2楽章 ラルゴ
草原に花は咲き乱れ、空に伸びた枝に茂った葉はガサガサと音を立てる。羊飼は眠り、忠実な猟犬は私のそばにいる。
第3楽章 アレグロ
舞い踊る空の上には夏の匂いがたなびき始めていた。
ガラス作家・アロマセラピスト 染谷雅子
ギャラリーはなぶさ https://www.hanabusanipponya.com
作品名:「ステンドグラス 春の窓辺のサンキャッチャー」