本格的な雨の季節となり、毎日空は低く、傘や雨靴との付き合いが深くなるこの頃です。最近は毎年豪雨災害の知らせに胸を痛めることもしばしばです。皆様、安全にお過ごしでしょうか。

 

二十四節気は小暑(しょうしょ7月7日)を迎えています。七十二候は、温風至(あつかぜいたる7月7日~11日頃)、蓮始開(はすはじめてひらく7月12日~17日頃)、鷹乃学習(たかすなわちわざをならう7月18日~22日頃)、と続きます。

“カタツムリ”

 

梅雨明け頃に吹く暖かく湿った南風、白南風(しらはえ)は天気の急変をもたらし、その風は蓮の蕾をほころばせ、卵から孵った鷹の雛は飛び方を覚え、巣立ちに備える、そんな候となります。本格的な暑さを前に、自然の様と植物と動物の変化が、活き活きと表される候です。雨の中でも、動植物はこの季節にすべきことを淡々とこなしているのです。人は、この雨の湿っぽい時期を鬱陶しく感じ、心身の健康を崩しがちになりますが、カエルやカタツムリなどを見習うべきかもしれません。

温度は上がりますが、雨に当たれば冷えますし、寝苦しい夜もあります。そんな蒸し暑さにも負けないためにも、身体に熱がこもることを避けましょう。知らぬ間に汗をかいたりしていることもあるので、水分補給も忘れずに。

 

雨はしとしと続きます。雨の降り始めの匂いは、乾いた気持ちにシュンと潤いを運んでくれます。雨も良いもの。

“梅雨の花

雨のつく言葉はたくさんあります。春雨、小雨、時雨、村雨、煙雨、穀雨、瑞雨、翠雨、驟雨、…。なんと沢山あるのでしょう。やはり、雨に喜び、雨に泣き、雨を待ち、雨を疎み、と、そんな私たちの歴史がこの言葉にこもっているのでしょう。「瑞雨(ずいう)」や「翠雨(すいう)」などという言葉は、まさに今の季節、雨に濡れる美しい緑を詠う言葉、また、「穀雨(こくう)」は恵みの雨。豊かな言葉の様々に驚くものです。

 

若い頃、「驟雨(しゅうう)」という言葉に出会った時、なんと素敵な響きだろう、と感動して、にわか雨が降らないかと願い、そして、「驟雨に出会った」と言ってみたい、と思ったものです。でも、画数が多くて、そうしょっちゅうは使えませんでした。

 

もう一つ、雨のつく歌の題もたくさんあるのです。「優しい雨」「氷雨」「雨やどり」「雨の慕情」「長崎は今日も雨だった」「雨音はショパンの調べ」…ね。雨は物語になるのです。いろいろな色合いを見せる雨。時により、気分により、体調により、雨は様々な色を見せてくれているのだと思います。

””カラフルな傘

子供の頃、お絵かきの時、雨は何色か、何色で描くべきか、考え込んだことがありました。雨は透明だから、何色にするべきか悩んだのです。水だから水色かしら、いやいや、青色の雨は降っていない。白で書いたら見えないし…、と。でも、その時は新しい傘を買ってもらった直後で、待ちに待った雨の様子を描きたかったので、いろんな色の雨粒を描いて雨が嬉しかった気持ちを表したことを覚えています。

 

ずいぶん大人になりましたが、今でも、お天気の良い日の気分の良さとは違い、雨は心模様を表してくれるような気がします。それは、雨が降っていることで、なんとなく、時間を持て余したり、ぼんやりと窓の外を眺めたり、と自分の中と話すことが多くなるのかもしれません。でも、決して内向的になることではなく、雨の瑞々しさを自分の中にも持ち、次に向けて、客観的に肯定的にゆっくり考える。そんなことを雨の時は与えてくれているのではないかと思うのです。流れる水の力です。

“結露

さあ、いよいよ、暦は夏本番、大暑へと続きます。暑さに負けない身体を作るためにも、良い眠りを心がけましょう。

 

今日の雨の色、何色でしたか?今夜も雨の音を子守唄に眠りにつくことでしょう。明日、何色の雨が見えるのか楽しみにして、心地よい眠りをお楽しみください。

 

染谷雅子

 

 

 

ガラス作家・アロマセラピスト 染谷雅子
ギャラリーはなぶさ https://www.hanabusanipponya.com

作品名:緑のピアス 「翠雨(すいう)」・リングは 「驟雨(しゅうう)」

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