今年は秋らしい秋がやってきたような。暦通りに涼しくなり、秋の雨も迎え、衣代わりの長袖には少し暑さを感じる数日を過ごし、とはいえ、やっぱり吸い込む空気には秋の清々しさを感じる、そんなこの頃です。
二十四節気は寒露(かんろ10月8日頃)、その名の通り、草木の葉に冷たい露が宿る頃となります。七十二候は、鴻雁来(こうがんきたる10月8日~12日頃)、菊花開(きくのはなひらく10月13日~17日頃)、蟋蟀在戸(きりぎりすとにあり10月18日~22日頃)と続きます。北の方から冬鳥がやって来て、秋の花の代表である菊の花が咲き始め、ふと気づくと戸口ではか細いけれど澄んだ虫の声が聞こえ始める、そんな、自然の生き物たちの変化を表す候となります。
長寿を祝い、菊の花びらを散らした、菊酒を飲む重陽の節句も旧暦ではこの時期となります。澄んだ空気に微笑む月を眺めながら過ごす夜長も今でこそ。鳥や虫の声に耳を澄ませ、花々を愛で、風に触れ、実りを楽しむ、と、五感で季節を楽しめるこの頃です。
この時期も引き続き、乾燥には注意です。気温が下がり、過ごしやすくなってくると、つい、水分補給を怠りがちになってしまいます。ただ、発汗量は下がりますので、むくみの原因になるような、水分の摂りすぎには注意です。
五感で楽しむ秋、一番はやはり前回に引き続き、実りの秋でしょうか。五感総出動で秋の幸せを感じられます。主食の新米のお供には、やはり秋の味、秋刀魚がぴったり。初水揚げは不漁で、今年の秋刀魚は高級魚となるかしら、と心配していましたが、収穫量も回復してきたようです。
火加減良く焼いた秋刀魚に大根おろしとカボス、そして、炊きたてごはん、これはまさに黄金食卓、五感で味わう秋の味覚です。
秋刀魚にはDHAやEPAが豊富に含まれていて、これらは脳の働きを活性化したり、血液の流れを改善する効果があると言われていますし、ビタミンB2やビタミンAなども多く含まれていて、これらは細胞の再生を助けたり、抗酸化の働きもあります。この時期の秋刀魚は夏の秋刀魚より脂がのっていますので、煮たり焼いたり、いろいろな調理方法で美味しくいただけます。ということで、今回はリクエストもいただきました秋刀魚料理レシピをご紹介します。
焼き秋刀魚を食べた次の日、我が家は「ちえさんのおうどん」が定番でした。不思議な名前のこのうどんですが、焼いた秋刀魚の身をほぐして、すりごまとあわせ、さらにすり鉢であたり、出汁で味を調え、ネギをたっぷりのせた釜揚げのうどんにこのたれをあえて、味の濃さはうどんのゆで汁で調整していただく、というものです。少し寒くなってきた日のおひるごはんのごちそうでした。母の友達、ちえさん伝授のレシピだそうで、そんな名前がつきました。おしゃべりしながら、魚をほぐす係、うどんの係、すり鉢をあたる係、と分担して準備したお昼の雰囲気を思い出します。いまでは、我が家の定番で、唐辛子をきかせたり、オリーブオイルでパスタに和えたり、と変化しつつ活躍しているレシピです。アジやイワシなどを使っても美味しくいただけます。
以前は秋の市民食として、秋刀魚は一尾二尾と求めるより、山盛りで売っていたものですから、日持ちのする調理方法でいただくことが多かった記憶があります。秋刀魚の生姜煮や甘辛煮つけなど、良く食卓に上がりました。
秋刀魚の梅干煮は骨まで食べられるご飯に美味しい逸品です。お鍋に食べやすい大きさに筒切りにした秋刀魚を並べ、1尾に付き1つぐらいの梅干を散らし、そこにお醤油少々と梅酒か日本酒を注ぎ味付けはそれだけで、あとは煮込むだけです。圧力鍋があれば時間も短縮できます。
洋風にアレンジするには、秋刀魚のアクアパッツァ。鍋にいろいろ野菜を敷き詰めます。セロリや玉ねぎは必須、トマトもお勧めです。お好きなハーブもお忘れなく。その上に秋刀魚を寝かせて、塩、こしょう、オリーブオイル、そして、白ワインをたっぷり注いで、火にかけます。お野菜も美味しくいただけて、残ったスープはスープパスタや、パエリヤの出汁としても使えます。
最後は秋刀魚のアヒージョ。こちらは小鍋にやはり筒切りにした秋刀魚とニンニク、あればマッシュルームなどを入れて、お好みで塩、こしょうで味をつけ、オリーブオイルを注ぎ、火にかけるだけ。ワインによく合う秋味アヒージョです。残ったオイルには唐辛子を足して、締めのパスタペペロンチーノに最適です。
つまみを作りながら、菊の花びらを散らしたお酒やワイン片手に過ごす秋の夜長は至福の時間です。でも、飲みすぎには注意してください。アルコールを飲むと眠りに入りやすくなりますが、過剰のアルコールは睡眠の質を下げてしまいます。適度な酒量と食欲を思いつつ、五感で迎える秋模様をお楽しみください。そして、今夜もぐっすりとお休みください。
染谷雅子
ガラス作家・アロマセラピスト 染谷雅子
ギャラリーはなぶさ https://www.hanabusanipponya.com
作品名:ブローチ「銀河」