街はすっかり秋の装いとなり、深まる秋のなか、わずかに晩夏の抵抗を思わせる暑さや、初冬の尖った空気を感じるこの頃です。二十四節気は秋の最後、霜降(そうこう10月23日)を迎えます。日照時間が短くなり、朝晩の冷え込みは深まり、暦の上では霜が降り始める頃となります。まさに、秋から冬へ季節が動く時です。七十二候は、霜始降(しもはじめてふる10月23日~27日頃)、霎時施(こさめときどきふる10月28日~11月2日頃)、楓蔦黄(もみじつたきなり11月3日~6日頃)と続きます。冷えた朝の空気の中、草木は霜で幻想的に白く覆われ、大気は変化しやすいため、冷たい小雨が時々降ります。ツタやカエデなどの木々の葉は黄色や赤に彩られ、秋の進み具合を伝えているようです。そんな大気とその変化により自然がまた進むことを表現する候となります。

 

日がさして暖かい日があれば、震えるような寒い日あり、寒暖差があり、まだまだ寒さへの耐性が低いこの頃、しっかり食べて、失われやすいエネルギーを補いましょう。また、その温度差が神経負担となり、日照時間が短くなることも加わり、自律神経の不調をきたしがちです。そこで質の良い睡眠が重要になります。

自然に上質の眠りを得るため、心身をリラックスさせ、脳内均衡やストレスを和らげる働きがあるアミノ酸の一種、GABA(Gamma Amino Butyric Acid)などを効果的に取り入れましょう。GABAは本来、神経伝達の均衡を保つため、脳内で興奮系伝達物質のグルタミン酸から作られているのですが、強度の心身疲労にさらされると、平常に戻そうと体内で大量に消費してしまいます。

 

GABAを多く含む食品は、緑黄色野菜や果物、発酵食品などに多く含まれています。また、カカオ製品、チョコレートにもGABAが含まれています。夕食後、適量のチョコレートをいただく、ゆったりした時間を作るのも良いかもしれません。

目を細めるような、まぶしかった日差しは遠のき、豊かな自然の変化をとらえる輪郭ははっきりと目に映り、秋は色彩感覚が豊かになるような気がします。高温多湿の夏にはなかなか手が伸びない、チョコレートやココアも秋の色として、その味わいや色から暖かさや温もりを感じます。大地を感じる茶色や実りのオレンジ色、黄色やワイン色なども秋の深さを感じる色です。

もう、何年も前ですが、友人家族と紅葉狩りに行きました。そのころまで、紅葉狩りの何たるかを意識したことはありませんでした。なぜ大人は紅葉狩りに行くのか?自然の変化のどこをそんなに感謝するのか?なぜそのために大事な時間を使うのか?など、不思議な思いでいました。でも、その秋、美しく彩られた山並みを見て、ああ、今、ここに居られて、この秋の色を見られてなんて幸せなことだろう、と心から思ったのです。なぜ、急にそんな気持ちになったのか、その時は気づきませんでした。今思うと、多分、あの頃が分岐点だったのでしょう。それまでは心身共に成長の上昇が急で、身の回りの世界の変化に対応するのが精いっぱいで、自然の変化に気づき愛でる余裕がなかった自分でしたが、その秋頃、衰えることない自然の成長の前に、自身の精神成長の上昇が身体成長の緩みを超えたのだろうと。

 

今は、自然の変化を五感で掌握しようと思う間もなく、季節の移ろいに気づいている自分に、齢を重ねる嬉しさと一抹の寂しさを思います。そんな、寂しい気持ちになるのも秋のなす技かもしれません。

錦の織物のように美しい秋、錦秋。今年も美しく彩られる秋の景色に心打たれることでしょう。無限の自然に対し、有限である自身の感覚を大切にこれからも育ててゆきたいものです。

 

秋深まり、冬を迎える準備を終え穴ごもりでしのぐ動物よろしく、家で暖かく過ごし、ひと時、ひとかけのチョコレートで秋を想い、そして、冬に備えて寒さに負けない身体を作るためにも、お気に入りのパジャマで良質の睡眠を手に入れてください。

 

今夜もぐっすりお休みください。

 

染谷雅子

 

 

 

 

ガラス作家・アロマセラピスト 染谷雅子
ギャラリーはなぶさ https://www.hanabusanipponya.com

作品名:青いリング「星雲」 / ランプ「秋の夜長」