小春日和と木枯らし吹く日を繰り返し、本格的な冬へ向かう頃となりました。所によっては小雪も舞います。二十四節気は小雪(しょうせつ11月2日)を迎えます。七十二候は、虹蔵不見(にじかくれてみえず11月22日~26日頃)、朔風払葉(さくふうはをはらう11月27日~12月1日頃)、橘始黄(たちばなはじめてきばむ12月2日~6日頃)と続きます。小雪舞うこの頃は空気が乾燥して、大気の水蒸気量が減るため、雨上がりの空には虹が見えることが減り、北から吹く風、朔風は木々の葉を吹き払い、そして、タチバナの実が黄色く色づくそんな候となります。自然の大気が織りなす初冬の景色です。

 

この季節、たわわに実る柑橘果実の美しさは、寒さや乾燥、冷たい北風にさらされても負けずに過ごすことを応援してくれているように見えて、元気が出ます。タチバナは日本固有のカンキツで、自生の物は種類によっては絶滅危惧種に指定され、国の天然記念物となっています。常緑樹であることから、「永遠」の象徴として、古事記や日本書紀にも記されていて、現在でも家紋や勲章に花や葉が図案化されて使われています。

日本固有のカンキツ タチバナ” width=

そして、この時期食材として、また冬至の行事として親しまれているユズも外来種ではありますが、古より食用、薬用、鑑賞と、様々に使われています。国内では四国地方で生産されるものが多く、最近では、高知県、徳島県、愛媛県の三県で国産ユズ生産の8割近くを占めています。

精油含有量が多い表皮部は香りづけや、香辛料として使われます。お吸い物のふたを開けた瞬間の青々としたユズの香りは、季節の到来を告げ、食事の始まりの鐘を鳴らしてくれるようです。また、果肉をくりぬいた皮の部分は柚餅子や柚子窯としてその香りを楽しむ器として、果汁は酢の代用として調味料として使われます。我が家のお正月のおせちの彩として、ユズのジュースで味付けする、柚子窯のなますは外せません。

香りを楽しむ器 柚子窯

そんな、私たちの生活に溶け込んでいるユズですが、栄養価は高く、その果皮に含まれるビタミンCの含有量はレモンの4倍と言われます。血行を促進して、冷え性の改善や、免疫機能を高める効果が期待できます。冬至の柚子湯にはそんな意味があるのですね。その果皮から圧縮抽出される精油の効果も注目されています。リモネン、γテルピネン、βフェランドレン、αピネン、リナロールなどが含まれていて、リラックス効果や疲労回復効果、また、自律神経を整える作用なども確認されています。さらに、種から抽出されるシードオイルには、アトピー性皮膚炎などの皮膚炎症を鎮静する効果が認められています。とにかく、果実全体がとても優秀なのです。

私たちの生活に溶け込んでいるユズですが、栄養価は高く、その果皮に含まれるビタミンCの含有量はレモンの4倍

そんな、冬の景色に欠かせない柑橘系の果物たちは、この季節に必要な栄養成分を補ってくれる大切な自然の贈り物です。「未病」ということばがあります。「自然の一部として生活して、病にならないようにする」という意味で理解していましたが、実は、「発病には至らないが、健康な状態から離れつつある」という定義だそうです。ちょっと悲観的。でも、季節の食材で食事を楽しみ、適度な運動を取り入れ、充分な睡眠をとり、病の状態に至らない、ということを「未病」の意味ととらえ、この季節を今年もミカンやユズに彩ってもらい、楽しみたいと思います。

はちみつ漬けにしたユズをひと切れ、お湯を注いでお楽しみいただけます。 width=

お休み前のゆったり時間に、はちみつ漬けにしたユズをひと切れ、お湯を注いで、冬の香りを味わってください。きれいに洗った、無農薬の柚子の表皮に、香り成分が良く抽出されるよう、フォークで軽く傷をつけ、輪切りにして、容器へ入れ、その上からはちみつを注いで数日置きます。紅茶や緑茶、温めた牛乳にいれても美味しくいただけますので、ぜひお試しください。リモネンの作用でリラックスして、疲労回復や睡眠の質の向上が期待できます。

そして、今夜もぐっすりお休みください。

 

染谷雅子

 

 

 

ガラス作家・アロマセラピスト 染谷雅子
ギャラリーはなぶさ https://www.hanabusanipponya.com

作品名:「ブローチ」

染谷雅子のガラス作品「ブローチ」” width=