新しい歳を迎え、皆様にはご多幸とご健康をお祈りします。
本年もよろしくお願いいたします。
年末年始は寒い日々が続きました。雪の多い地方では降雪量が多くなり、美しい雪景色と感じる気持ちとは裏腹に、お住いの方々には大変なご苦労の種なのでしょう。二十四節気は小寒(しょうかん1月6日頃)を迎えています。年が明けて最初の節気は、いわゆる「寒の入り」と言われる、寒さが本格的になる頃です。七十二候は、芹乃栄(せりすなわちさかう1月6日~10日頃)、水泉動(しみずあたたかをふくむ1月7日~15日ごろ)、雉始雊(きじはじめてなく1月16日~20日頃)と動きます。陽の当たる水辺では、春の七草にも並ぶ、芹がはえ始め、凍っていた泉は溶けだして、少しずつ動き出し、雄の雉は雌の雉に向け、鳴き声を上げ恋の始まりを知らせます。季節は本格的な寒さに入る中、大地の温もりは春の準備を確実に始め、それを感じる動物達も次の季節へ向かう、そんな候です。真冬の気候に、人間たちは寒さを遠ざけようとすることで、家にいる時間が長くなり、内向的になりがちですが、自然は一足先に進んでいるのです。 まだ日照時間が短いこの時期、就寝時間や起床時間の調整がうまくゆかなくなることや、就寝時や起床時の気温の低さなどが原因で、眠りが浅くなり、眠りの質の低下が起きやすくなります。良い眠りに必要なホルモン、メラトニンが作られにくくなっているためなのです。葉物野菜、特に、旬の白菜やキャベツなどはメラトニンの分泌を整える食品です。食事にじょうずに摂り入れることや、寝具や寝巻などを選ぶこと、また、寝室環境を整えるなどして、質の良い睡眠時間が得られるよう心がけましょう。 この季節になると、コートを着るにも少し明るい色を選びたくなります。春を待つ気持ちの表れでしょう。冬の衣服は重みがあるので、重ね着や、薄物を組み合わせるなどという楽しみ方は、少し先までとっておきましょう。その点、着物の着重ねは無限大。いろいろ自由に試すことができます。仕事始めには晴れ着で出社、などという習慣も過去のものとなってしまいましたが、私は好きでした。成人式の着物も本当に小物まで丁寧に選んで、一生に一度の振袖を楽しみました。その振袖は、袖を切り、今でも着ています。
正装が必要となる場面では、いろいろと、規則がある着物の世界ですが、一般的な宴会や外出時の着物は、普段洋服を選ぶように、自由に重ねて良いのです。型あっての、型破りですので、まずは基本の着方をネットなどで知ることはお勧めですが、難しい規則はありません。下着の上に着物、帯を巻いて、帯締めでおさえ、帯揚げで整え、羽織を着たら、その上にコート。この基本は洋服と同じなのです。
下着は和装用の物もありますが、普通の長めのTシャツを着て、スパッツを履いたり、足袋も洋装用の足袋型のソックスでもよいですし、寒ければ、足元はブーツでも素敵です。着物の重ね着も大丈夫。帯が窮屈なら、サッシュベルトを使ったり、帯締めにはブランド店のきれいな紐を使ったり、帯揚げにはスカーフやマフラーを使ったりすることも自由です。
祖父母が着物生活だったこともあり、子供の頃から着物を着る機会が多かったと思います。また、祖母が自分の着物を私たちのために作り直す様子も見ていますので、着物というのは、なんと長生きなのだろう、と思いました。今でも、祖母が着ていた着物を道行に仕立て直して着ています。色の組み合わせや柄の組み合わせも、楽しさの一つで、同じ着物でも、人によって合わせる帯や帯揚げの色の違いで、全く違った印象となり、そんな面白さもあります。
そして、小物がまた可愛いのです。帯留めや根付け、刺繍のかけ襟や柄の足袋、扇子や小物入れ、羽織紐など、際限なく、それらはまた、同じ着物の表情を変えることを手伝ってくれます。子供の頃、七五三の衣装を着せてもらった時、大きめのふさ飾りが付いた筥迫(はこせこ)という、小さな箱が帯の上に添えられました。その不思議な形と、興味をそそる秘密感に心躍ったものです。それが紅を入れたり、小物を入れたりする、今持っている化粧ポーチのようなものと知った時には、なるほど、昔の人も、今の私たちと同じで、おしゃれを探求していたのね、と、納得しました。
着物の着方は人それぞれ、自由にお楽しみください。個性は出すものではなく、出るもの。普段の洋服生活で培った感覚を存分にこの持続可能な日本の着物生活を、どうぞお楽しみください。
とはいえ、久しぶりの着物お出かけは、疲れるもの。帰ってきて、さっぱり脱ぎ捨てる瞬間も、楽しみの一つです。そして、今宵もぐっすりお休みください。
染谷雅子
ガラス作家・アロマセラピスト 染谷雅子
ギャラリーはなぶさ https://www.hanabusanipponya.com
作品名 帯留め「ゆきうさぎ」