夏、盛りの頃。二十四節気は大暑(たいしょ7月23日)を迎えました。
太陽は高く、自然界すべての活力が盛んになる時です。
七十二候は、桐始結花(きりはじめてはなをむすぶ7月23日~27日頃)、土潤溽暑(つちうるおいむしあつし7月28日~8月1日頃)、大雨時行(たいうときどきふる8月2日~6日頃)と続きます。桐は不思議な植物で、初夏に咲いた花が真夏のこの時期に、翌年に咲く花のつぼみをつけます。熱気に満ちた地面の土は湿度で潤い、大気の活発な変化で立ち上がる入道雲は、時には夕立のような大雨を呼び、蒸し暑い空気を運びます。そんな、真夏の大気や大地の変化と、その恩恵を受ける植物たちの営みを表す候となります。
そんな、活気のある時であると同時に、上昇する気温や湿度は、体にも熱や湿気を呼び込み、心身に疲労感を与えもします。近頃の異常な暑さは、熱中症の発症などにもつながりますので、冷房機器を上手に取り入れて、暑さ疲れをため込まないようにしましょう。
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身体に潤いをもたらし、熱を冷ます食材としては、キュウリやナス、そして、トマトなどの夏野菜がぴったりです。キュウリやナスには体の熱を冷ます作用や、胃腸の働きを活発にする作用などがあり、水分を補いながら、余分な湿気を排出するという、夏を乗り切るために欠かせない作用を持つ食材です。トマトには加えて、抗酸化物質のリコピンが豊富で紫外線による肌のダメージを軽減する作用や、イライラや不安感を落ち着かせる作用もあるのです。毎日の食事に、ぜひ、トマトを取り入れましょう。
そして、夏野菜の代表の一つ、トウモロコシも消化機能を高める作用がありますので、暑い時の栄養補給にぴったりです。
露店で買ってもらう、醤油を塗った焼きトウモロコシは、お祭りの楽しみの一つでした。夏休み始まって間もなく、地元の神社のお祭りに行く日は、朝からとても良い子にしていました。ラジオ体操にもきちんと行って、午前中のお手伝いも、宿題もお昼寝も時間割通り。おやつの後に、浴衣に着替えさせてもらい、金魚みたいな兵児帯の結び目をひらひらさせながら、お祭りに出かけます。お祭りの意味も何も知らなかったけれど、とにかく、神様にご挨拶してから、キラキラ光る屋台の電気と軽やかなお囃子の音、様々な露店の放つお祭りの匂い、水風船や金魚すくい、ハッカパイプや綿菓子も、なにもかもにワクワクと胸躍らせ、夏休みの一大行事の一つに挑みました。お祭りのお小遣いは決まっていて、何に使うかは自分で選びます。水風船は絶対、あとはハッカパイプと…、なんて、姉妹で計算しながら。夜店を一回りして、最後に綿菓子とトウモロコシを買ってもらって帰るのです。家に戻り、汗で張り付いたおでこの髪の毛も気にせずに、トウモロコシを頬張りながら、浴衣のままひらひらと、その興奮を父に報告するのです
今でも、地元のお祭りには行きますが、あの子供の頃の気持ちは、思い出せても、戻ってこないものだと思っていました。今年は、久しぶりに開催される地域のお祭りや神事も多いようです。先日、「野田の津久舞」を見ました。本来、地元神社に雨乞いの神事として奉納されていたもので、県の指定無形民俗文化財となっています。賑やかなお囃子の中、15メートルもある柱を、蛙に扮した舞い手が昇り、その柱や柱の先に置かれた樽の上で軽業を行い、最後には柱の上から地面まで張られた綱を滑り降りるという、最後まで、手に汗握るような緊張感と伝統文化の厳かさのある、素晴らしい舞いに感動しました。
その感動は、神事のことなど何も知らなかった、あの頃のお祭りの夜の気持ちと似たものでした。似たものだけど、違うもの。人が神に頼る、という、その切実な祈りの気持ちや歴史を学んで、大人になった今、祭りは日々の暮らしの安寧を願う気持ちと、毎日の些細な事への感動そのものなのかもしれない…。
と、そんなことを思いながら、祭りの締めは、焼きトウモロコシとビールでした。
真夏の夜。明日もまた、元気に過ごせますよう、今夜もぐっすりお休みください。
染谷雅子
ガラス作家・アロマセラピスト 染谷雅子
ギャラリーはなぶさ https://www.hanabusanipponya.com
作品写真は「夏夜空」