「暦の上では…」という言葉をよく聞きますが、まさにこの時期、あまりに言葉と格差のある大気の様子です。まだまだ、こんなに暑いのに、立秋(りっしゅう8月7日)を迎えます。この日より、夏の挨拶は、残暑お見舞いへと変わります。七十二候は、涼風至(すずかぜいたる8月7日~12日頃)、寒蝉鳴(ひぐらしなく8月13日~17日頃)、蒙霧升降(ふかききりまとう8月18日~22日頃)と、続きます。厳しい暑さの中でも、ふと気づくと、朝や夕暮れ時には涼しい風がそよぎ、賑やかなニイニイゼミやアブラゼミに代わり、ヒグラシが鳴き、一抹の寂しさを思い、朝夕には温度が下がるため空気中の湿度が霧となり漂う、という、昼間の暑さに反し、季節は確実に秋へと動く様を表す候となります。

夕日と田んぼ

真夏の太陽は高く、特にこのところの酷暑により、紫外線や冷房の影響、台風や集中豪雨を生み出す気圧の激しい動きなど、生活を取り巻く環境は目まぐるしく、その負荷が心身の負担となります。結果、自律神経の均衡が崩れ、睡眠障害や食欲不振を起こしやすくなります。これが、蓄積され、夏バテ症状へとつながります。体が疲れていると感じたら、体温より少し高い温度の湯船に、足や頭皮のマッサージをしながら、ゆっくり20分ほど浸かり、汗が引いたころ寝床についてみてください。身体の緊張がほぐれて、血行が良くなり、副交感神経が優位になり、良い眠りにつくことができます。ぜひ、お試しください。

オイルマッサージ

夏休み真っ盛りのこの時期、昔は毎日外へ遊びに行きました。プールに行ったり、虫取りに出かけたりと忙しい毎日で二学期の始業式にどれだけ陽に焼けて黒くなったかを競い合ったものです。アスファルトやコンクリートがこんなに多くなかったので、熱がこもることも今よりは少なかったのでしょうか。地球環境は変わり、最近は外出しないようにしなくてはならない暑さとなり、あいさつも「ほんとうに暑いですねぇ」が常套になって、暑さの恩恵も感じにくくなってしまいました。

蜃気楼

でも、せっかくの今年の夏、この暑さの良さを味わわなければ、と思い、暑さの良い所を考えてみました。

まず、洗濯物が良く乾く。午前中に干すと、昼過ぎにはもうパリッと乾いている洗濯物たちは、太陽の熱を抱えて、清潔感たっぷりです。冬の乾燥した温度の中で、カリっと乾く冷たい洗濯物とはまた違う、幸せを感じます。

次に、素麺が美味しい。やっぱり、夏は素麺よね…、と、ほとんど毎日のように、素麺をいただきます。普通に出汁につけて食べるもよし、冷や汁にしたり、カレー味にしたり、トマト素麺にしたり、変幻自在な素麺の力は、少しぐらい、食欲が無くてもお腹の中に納まってくれる優しさがあります。これも冬には味わえない幸せ。

そして、野菜が美味しい。秋の実りの季節にいただく、芳醇で濃厚なおいしさと違い、瑞々しく身体に沁みわたるような季節の味、これも幸せ。と、結局、食べ物のことばかりになってしまいました。

素麺

一般的にはお肌の大敵とされる紫外線も有益なことがいっぱいです。まず、ビタミンDの生成です。ビタミンは通常食物からしか摂取できませんが、ビタミンDは、紫外線の助けにより、体内で合成することができます。ビタミンDが不足してカルシウム蓄積が減ることで、骨が弱くなり、骨粗そう症の原因ともなります。食事から摂取するビタミンDだけはカルシウム代謝には不足しがちですので、目安として、夏は日陰で30分ほど過ごすことで、食品摂取と合わせ充分なビタミンDが供給されるそうです。

そして、殺菌作用がとても高く、細菌のDNAを破壊して増殖を抑える力があり、食品の殺菌などにも使用されます。家庭でも、洗濯物の殺菌はもちろん、靴など日に当てることで殺菌脱臭効果が期待されます。

 

また、紫外線ではなく可視光線ですが、朝の光をたっぷり浴びることで、脳内で体内時計が働き、睡眠ホルモンのメラトニンが分泌され、覚醒と睡眠の切り替えが正常になることで睡眠の質が向上すると言われます。また、同時に幸せホルモンといわれる、セロトニンが分泌されることで、精神の安定を保ち、うつ状態を抑制する働きもあります。

太陽と新緑

そんなことを考えていると、暑さもありがたく、少し、涼しくなるような…。

 

あ、ビールの美味しい幸せを忘れていました。

夏の暑さの幸せを数えながら、今夜もぐっすりお休みください。

 

染谷雅子

 

 

ガラス作家・アロマセラピスト 染谷雅子
ギャラリーはなぶさ https://www.hanabusanipponya.com

作品名:「浴衣帯飾り」

ガラス作品_浴衣帯飾り