雨が降ると、その度に少しずつ空気が変わってゆくこの頃です。二十四節気は処暑(しょしょ8月23日)を迎えます。暑さが徐々に和らぐ頃とされていますが、まだまだ夏の名残は濃い時期、残暑見舞いは処暑が終わる頃までで、夏のご挨拶は最後の機会となります。七十二候は綿柎開(わたのはなしべひらく8月23日~27日頃)、天地始粛(てんちはじめてさむし8月28日~9月1日頃)、禾乃登(こくものすなわちみのる9月2日~7日頃)と続きます。薄紅色に変わった綿の花は枯れて、その実がはじけ、白い綿がふんわりと飛び出し、大気と大地には新しい季節の気配が行き渡り、稲や麦、ひえやあわなど、穀物は実を結びその穂先は重くなり、田圃は黄金に輝く。大気の変化に伴い、夏の力を蓄えた植物たちの実りと、豊穣の時を迎えることで季節の移ろいを知る、そんな候となります。

稲

少し暑さが緩むと、ふっと体が楽になり、食事もしやすくなるので食べ過ぎてしまったり、体も動きやすくなるため無理をしたりしてしまいがちです。でも、残りの暑さが戻ることもあり、体に思わぬ打撃を受けることになります。美味しいものが出回る季節に向かいますが、もう少し我慢。消化の良い物や暖かいものをいただくようにして、消化器官への負担を軽くしましょう。また、冷房などで緊張した筋肉をゆっくり伸ばすよう、軽いストレッチ運動を取り入れて血行を促進させましょう。少し動きやすくなってきたこの時期に、夏の疲れを少しずつ手放してゆきましょう。

また、立春から数えて二百十日の9月1日頃は台風が来る頃、とされ、気圧の変化が激しい時期でもあります。季節の変わり目、自律神経の乱れなどで体調を崩さないよう、睡眠環境を整えて、質の良い眠りを心がけましょう。

料理

とは言いつつ、実は、行く夏を惜しむ気持ちが沸き上がる時でもあります。空を見上げれば、入道雲は見えても、時期を知っているかのように、その盛り上がりの勢いにも威勢の良さは見られず、かわりに、薄綿を伸ばしたような雲が広がり、空もやけに青く澄んで見えます。夏休みも終わり、一抹の寂しさを思う初秋の空。

 

小学生の頃、夏休みに「お空のかんさつ」という、お休み中、毎日同じ時間に空を見上げて観察日記をつける、という自由研究に挑戦しました。自分の考えでは思いつかなかったと思うので、多分、母の誘いがあったのだと思います。毎日、空の様子や雲の様子などを日記のように書き上げて、クレヨンや色鉛筆で着色して、一冊にまとめ上げました。思い出すのは、夏休みの終わりが近づいてくるにつれ、空を塗る青色が濃くなっていったこと、雲が薄くなっていったこと、それを描く絵力がなくて、随分と考えたこと。そして、何日分か記録をさぼって天気が不明になり、取ってあった新聞を父に遡ってもらい、半べそをかきながら母に手伝ってもらった夏休み最終日。地域のコンクールで賞を取るという結果になり、授賞式に出席したことを覚えています。

色鉛筆

今でも、空を見上げることが好きです。背景のような空の青色の違いや、雨降り前の銀ねず色の空の深さ、閃光を放ったり虹が現れたりと、時には光る空、そして、風。季節に伴う空と大気の変化はたくさんのことを知らせてくれます。絶え間なく動き、形を変えながら流れる雲もまた物語。すじ雲、うろこ雲、いわし雲、レンズ雲、傘雲、ひつじ雲、…と、雲の名前もいろいろあります。昔から言われているものや、最近の気象状況で生まれた名前もありますが、どれも、素敵な名前です。空を見上げ、雲を追い、風を感じていると、その自然の原動力による、様々な妄想や空想に時間を忘れてしまいます。

大昔からずっと、時代による変化はあっても、季節の空模様は変わらず、そして、気象の変化を受け取る力も変わらないのだなと思い、さらには、それを生活の指針にして続いている人々の営みと、それをしたためた和暦の麗しさも改めて思う季節の変わり目です。

下を向きがちな日常生活、時には空を見上げてゆっくり過ごす時間で、体の緊張をほぐしてみてください。

空

あんなに暑くてつらい日に、汗をかきながら夏に恨み言をつぶやいた日々を反省しつつ、夏の後ろ姿にすがりたい気持ちになる、そんなこの頃です。

 

夏の思い出、もう一度なぞって、今夜もぐっすりお休みください。

 

染谷雅子

 

 

 

ガラス作家・アロマセラピスト 染谷雅子
ギャラリーはなぶさ https://www.hanabusanipponya.com

作品名:「蒼色ガラス」

ガラス作品_蒼色ガラス