一年で最も寒くなる頃、大寒(たいかん1月20日)を迎えています。二十四節気の最後の節気となり、この寒さを超えると暦の上では春となります。外気は乾燥して、自然界のすべての物に冷たい息を吹きかけ、氷の世界を創り出します。七十二候は、款冬華(ふきのはなさく1月20日~24日)、水沢腹堅(みずさわこおりつめる1月25日~29日)、鶏始乳(にわとりはじめてとやにつく1月30日~2月3日)と続きます。雪の合間から、春の訪れを思わせる優しい若草色のフキの花、フキノトウが咲く頃となっても、まだまだ流れる沢の水までも凍らせる深い寒さ。そして、すぐそこまで来ている春の温もりを早くも感じるニワトリは、卵を生み始める、そんな、真冬と浅い春の境目の候です。

フキノトウ

厳しい寒さを迎えるこの時期、身体を温め、熱量を蓄えて、寒さから身を守ることが必要となり、力を蓄えやすい身体を作ることが大事です。そのためには、栄養があるものを摂取して、それをきちんと熱量に変換できる胃腸の機能を整え、体全体に水分や栄養を行き渡らせるように、きちんと動き、精神的にも健康でいることです。そう、暦に気を配り、季節の変化を見守りながら健やかに生活するということは、きちんと食べて、きちんと動いて、きちんと眠る、というこの単純なことに尽きるのです。さらに付け加えるなら、空気の変化をよく見て、よく聴いて、匂いや肌で感じ、五感を全機能させて自然環境に気持ちを添わせることでしょうか。この二十四節気の気候変化と、七十二候の自然界の動きを辿ることは、そんなことを改めて気づかせてくれるのです。

結露

関東南部のこの年末年始は、いかにも真冬の晴天といった、きりっとした青空に、低い太陽が、昼間の短い時間ですが、温もりを与えてくれる、という、穏やかな冬景色でした。地域によっては雪が多かったところや、雨が続いたところなど、様々だったことでしょう。天候に関わらず、共通なのは、夜の時間でしょうか。地域により日の出や日の入りの時間は違っても、夜の時間の長さは変わりません。

月

そんな冬の夜の就寝前、お気に入りのパジャマに着替えて、ほっと一息ついて、今日一日のことを反芻してみたり、明日の予定を確認したりする時間が大好きです。時には、撮りためたビデオを見入ってしまったり、本に夢中になったりすることもありますが、いろいろな思いつきを練り上げたりする、冬の夜は自分を作る大事な時間です。夏の夜はちょっと違う感じ。夏の夜は短いし、暑いし、とはいえ、冷房は疲れるし…、楽しいことはいっぱいあるけれど、なんというか…、哲学的じゃない、というか…、夏には悪いけれど。

 

そんな時間を過ごして、少しだけ頭が疲れたら、軽いストレッチをして、布団に入り、眠りにつきます。暖かい部屋で、ゆったりと頭と体を刺激して、少し温度が上がった体とパジャマの間に、もう一つ優しい空気の層を着ているようで、気持ち良く眠りに誘われます。

 

布団の幸せ、眠りの幸せを感じる瞬間です。

 

一日の終わりであり、一日の始まりとなる大切な睡眠時間には、この寝床の温度がとても大事です。「温もり」や「暖かさ」は平和や幸せを象徴する言葉であるように、暖かいということは、体を弛緩させて、緊張を解き、ゆったりと過ごせる、「幸せ」ということ。間接照明

 

現代の日本では、寝具として毎日布団を敷いているという方よりベッドを使っている方が多いと思います。少し前までは、居間として使っている部屋に家族の布団を敷いて並んで寝ていた、ということも多かった日本の住宅事情は、今や変化して、欧米方式の単独の寝室を持つ家屋が多くなりました。でも、欧米のマットレスの上にベッドパッドを敷き、ボックスシーツ、フラットシーツと軽い掛布団、という寝具とは違います。機能としてのベッドの上には、衣替え同様、季節に合わせた布団を選び、晴れた日には布団を干し、気候に合わせて、こまめに温度や湿度の調節をする日本人の感覚は、季節を大切にして、自然の中でその一部として添い合わせながら生きてゆく、知恵と方法を知っていると言えます。

寝室

脳や身体には、充分に眠ることでしか得られない、休息して整理して再生するという機能があります。その機能を効果的に働かせるためにも、昼間の行動や食事はもちろん、灯りや香りを使った寝室の環境づくり、最適な布団を選び、お気に入りのパジャマを選び、そして眠る前の大事な妄想時間…、と、生活すべての時を大切に楽しく使い、一日の終わりを良い眠りで締めくくりたいものです。明日の朗らかな始まりのためにも。

 

さて、そろそろ、パジャマに着替えて、眠りにつきます。

来る春の穏やかな日差しを楽しみに、穏やかな夢が見られそうです。

 

今夜もぐっすりお休みください。

 

染谷雅子

 

 

 

ガラス作家・アロマセラピスト 染谷雅子
ギャラリーはなぶさ https://www.hanabusanipponya.com

作品名:「氷の世界」

ガラス作品_氷の世界