ついこの前、七草粥をいただいた気がするのに、季節は動き、春分(しゅんぶん3月21日)を迎えます。この日から昼の時間が夜の時間より少しずつ長くなります。空気が潤いをおびて、春の訪れを実感し、その先の季節の変化を思い浮かべて、つい嬉しくなるこの頃です。七十二候は、雀始巣(すずめはじめてすくう3月21日~25日)を迎え、桜始開(さくらはじめてひらく3月26日~30日)、そして、雷乃発声(かみなりすなわちこえをはっす3月31日~4月4日)と続きます。越冬した雀が巣を作り、桜の花が咲き始め、さらに咲き誇り、遠くでは、春の訪れを知らせる春雷が聞こえるという、春真っ盛りに心躍る候となります。

すずめ

自然界が活発に動き出し、私たちの生活も新しい環境に向けて動き出すこの季節ですが、春の気候は安定せず、気温の変化が大きくなります。日中は半そでになれるような暖かさでも急に夕方から寒くなったり、そうかと思うと、睡眠時には冬のパジャマのままでは寝苦しさを感じたりします。また、社会的な環境の変化に伴い、忙しさが増したり、外食の機会が増えたりと、心と体は不安定になりがちです。感じたその瞬間はたいしたことなく思い、やり過ごしてしまいがちですが、そんな小さなことの積み重ねが自律神経のバランスを崩し、体調不良につながります。いつも自分を観察する目を持ち、温度の調整ができる軽い衣料を携帯したり、部屋の温度を管理しやすくしたり、と工夫してみましょう。食事も、神経質になる必要はありませんが、一週間単位ぐらいで栄養バランスを考えて食事の調整をすると良いですね。外食が続いた後は、一日季節の野菜中心の軽い食事をとりいれるなど…。そのためにも食事を記録するのはとても効果的です。日記代わりに食事の写真を撮ると便利です。

サラダ

桜の便りにはいつも心動かされます。この小さな、桜色としか言えない淡い色の花の持つ力はなんと強いのでしょう。ほんの10日ばかり、あたりを桜色に染め上げ、雨のように花びらを一気に散らし、その美しさと儚さ、そして、潔さが日本人の心に同期したのでしょうか。日本の国花の一つは菊ですが、桜も同時に国花として認められています。「花」といえば、同時に桜を思い浮かべる人も多いはず。待ち焦がれて咲いた桜を散らすような冷たい春の雨は「花散らしの雨」、一斉に散る桜の花びらは「花吹雪」、その花びらが川面に漂うさまは「花筏」…、と、桜は私たちにとって、いわゆる「花」なのです。

花筏

バラ科サクラ属の桜は、日本原産種もありますが、外来種は中国から日本に持ち込まれます。奈良時代、日本最古の歴史書「古事記」には、女神「木花開耶姫(このはなさくやひめ)」が登場し、霞にのって富士山の上から花の種をまいた、と記載があり、ここから、日本の桜の歴史は始まります。平安時代には、すでに貴族階級で桜を春の訪れの花として鑑賞する習慣があり、桜の下で宴を催している宮中の様子は、かの「源氏物語」にも登場しますし、「源氏物語」より少し前に編纂された「古今和歌集」にも春の桜を詠んだ美しい歌は多く収められています。鎌倉時代に入ると、お花見の習慣は徐々にあらゆる階層に広がってゆき、安土桃山時代には、数千の人が集まったとも言われる、豊臣秀吉が行った醍醐の花見や吉野の花見は有名です。

花見

そして、江戸時代以降、花見は庶民の楽しみとして広く浸透しました。また、もともと桜は交配しやすい種であることから、改良が盛んにおこなわれるようになり、江戸時代後期に吉野桜が、現在の東京都豊島区にあった染井村で作り出され、ソメイヨシノと名付けられたのです。

桜1

時は流れ、引き継いできた習慣として、私たちが咲き誇るそのソメイヨシノの下で、大事な人と春のひと時を過ごすのです。桜の樹は代を変えながら、そんな私たちの物語もつぶさに見ていることだと思います。会話ができるものなら訊いてみたいものです。花と言えば桜、桜色の春を今年も満喫いたしましょう。

桜2

さて、桜を味わう、というのはいかがでしょう?桜の塩漬け、皆様いかがご利用ですか?桜茶としてお湯に浮かべて飲むだけで残ってしまってはもったいない!例えば、水に浸して塩出しをして、その香りのついた水を使ってご飯を炊き、最後に塩抜きした桜を飾り付けて桜ご飯、パスタソースの味付けに使って、サクラのパスタにしたり、肉や魚の漬け込みに利用したりと、いろいろと桜を楽しむレシピは浮かびそうです。香りを楽しむ春のお皿にぜひ取り入れてみてください。

桜の塩漬け

さあ、今年のお花見弁当のお品書きでも考えながら、今夜もそろそろ眠りにつきたいと思います。皆様もぐっすりお休みください。

 

染谷雅子

 

 

 

ガラス作家・アロマセラピスト 染谷雅子
ギャラリーはなぶさ https://www.hanabusanipponya.com

作品名:「さくらのサンキャッチャー」

ガラス作品_さくらのサンキャッチャー