今年の春はなんだか自然も困惑しているのか、花の咲き出す時がいろいろちょっと違うような。毎年、連休直前から咲き出して連休中を彩ってくれるツツジは、もうすでにぺったりと花を塞いでいるし、いつもお休み中に咲き誇る白バラはとっくに咲ききって、いちど切りもどし、もう新しい蕾が出ています。でも、変わらず、確かに、夏を迎えようとしている自然世界はもりもりと繁茂(はんも)して成熟へと向かいます。
二十四節気は立夏(りっか5月6日)を迎えています。七十二候は、蛙始鳴(かわずはじめてなく5月6日~10日頃)を迎え、蚯蚓出(みみずいずる5月11日~15日頃)そして、竹笋生(たけのこしょうず5月16日~20日頃)と続きます。夏を前に、春に目覚めたカエルは鳴き始め、一足遅れて、ミミズも動き始め、生き返った土の中からは、真竹のタケノコがすくすくと育ち旬を迎えます。そんな、跳躍への準備のような夏の始まりの候となります。
まだまだ、完全に衣替えをするには少し早いこの時期、つい疎かにしがちなことの一つは紫外線対策です。夏の刺すような日差しではなくても、日中の紫外線量は確実に増えてゆきます。お顔や手足もそうですが、頭頂部、そして、眼も注意しましょう。朝、出掛けにUV対策をすることをお忘れなく。つい忘れがちな、手腕や脛、足首などにも、UV カット作用のあるジェルやクリームなどを一塗して、日差しからの刺激を守ると同時に、保湿にも気を配りましょう。
緑茶には紫外線を浴びると生成される活性酸素を抑制する働きがあるとされています。日々の手軽な紫外線対策として、水出しの緑茶を水分補給としてお試しください。
5月2日は、立春から88日目。季節の変わり目の雑節の一つである、八十八夜を迎えています。昔から、茶摘みの目安とされてきました。暑すぎず、爽やかなこの季節、人の生活に密着した、自然の節目が多くあります、田植えや畑の種まき、また、海では潮干狩りもあります。そして、竹林ではタケノコ狩り。
私たちが一般に食べているタケノコは孟宗竹(モウソウチク)で、3月から5月上旬にかけてが旬となります。真竹(マダケ)や淡竹(ハチク)は4月から5月下旬が旬となります。
さて、この春、人生初めてのタケノコ狩りに挑戦しました。4月中旬の雨上がりの朝、目指す竹林へ着くと、びっくり。まるで、絵で見たような春の竹林。黄色に近いような色から濃い色まで、濃淡様々な緑色のすっと伸びた竹の重なりの合間を縫って、まるで親について歩く子供のように、ふさふさとした茶色い皮を付けた、様々な背丈のタケノコが伸びているのです。目が慣れてくると、地面近くからちょっとだけ頭を出しているタケノコもたくさんありました。こんなにいっぱい!すごい!自然ってなんてすごいのかしら、と、感嘆しきり。早速、タケノコ掘りの作業にはいります。竹は地下茎で繁殖してゆきます。まずはタケノコの皮の先がどちらに向いているかを確認します。皮の先にある小さなひげがどちらを向いているかで根っこの方向を予想するのです。そして、その根を断ち切るような角度でスコップの先をザクっと入れて、もう一度、体重をかけてスコップを深くいれて、次に角度を変えて、テコの原理を使ってクイっと掘り上げます。最初は難しかったけれど、コツをつかめば、小さいタケノコなら私でも掘り出せるようになりました。
気付けば、大量のタケノコ。でも、まだまだ、竹林にはタケノコが「ここにいるよ」と知らせるように、土の盛り上がりがいくつも見えます。ただ、健康で美しい竹林を作るためには、やみくもにタケノコを掘り出してしまってはいけないとのこと。この日は、上手なタケノコの掘り方を学んだと同時に、人と竹林の共存の規則があるということも学んだ日でした。
有意義なタケノコ狩りで得た、瑞々しいタケノコたちは様々な料理へ形を変え、きちんとお腹に納まり、食の幸せと自然への感謝を思った晩春の週末でした。
母が毎年作ってくれた、木の芽和えももちろん作りました。まだ、味はちょっと追いつかないかな…。母の日が近づきます。母があの竹林を見たら、何と思うかしら?このタケノコの瑞々しさをどう言い表したかしら?もう見送ってから何年も経つのに、いつも、なにかにつけ、思う母。今年も気持ちの良い初夏を迎えます、と語りかけながら、そろそろ眠りにつきたいと思います。
皆様、今夜もぐっすりお休みください。
染谷雅子
ガラス作家・アロマセラピスト 染谷雅子
ギャラリーはなぶさ https://www.hanabusanipponya.com
作品名:ピアス「チューリップ」