風薫る五月。 森羅万象美しいこの季節がまた巡ってきました。二十四節気は小満(しょうまん5月21日)を迎えました。地上すべての物に命の力が満たされてゆきます。七十二候は、蚕起食桑(かいこおきてくわをはむ5月21日~25日)となり、紅花栄(べにばなさかう5月26日~31日)、麦秋至(むぎのときいたる6月1日~5日)へと続きます。生命力に満ちた植物界では、桑の葉が茂り、蚕たちは繭(まゆ)を作るべく、その葉を貪ります。紅花は鮮やかに咲きそろい、麦畑では夏の収穫を迎える麦の穂が金色の波を立てています。そんな、充填(じゅうてん)の完了と発散の始まりが、夏の到来を告げているかのような、初夏の自然界を表す候となります。 祖父が真夏に麻のスーツを着ていたことを思い出しました。私たちは「おじいちゃま、おズボンしわくちゃ!」なんて、笑っていたけれど、祖父はおしゃれだったのね。上着の袖をまくり上げて、手を洗っていた祖父の笑顔の景色が蘇ります。

2023.05.22