風薫る五月。
森羅万象美しいこの季節がまた巡ってきました。二十四節気は小満(しょうまん5月21日)を迎えました。地上すべての物に命の力が満たされてゆきます。七十二候は、蚕起食桑(かいこおきてくわをはむ5月21日~25日)となり、紅花栄(べにばなさかう5月26日~31日)、麦秋至(むぎのときいたる6月1日~5日)へと続きます。生命力に満ちた植物界では、桑の葉が茂り、蚕たちは繭(まゆ)を作るべく、その葉を貪ります。紅花は鮮やかに咲きそろい、麦畑では夏の収穫を迎える麦の穂が金色の波を立てています。そんな、充填(じゅうてん)の完了と発散の始まりが、夏の到来を告げているかのような、初夏の自然界を表す候となります。
年度がかわり数か月、環境がかわったり、新しい世界に挑戦したりと、緊張して過ごした日々の疲れがそろそろ出るこの時期です。気づかぬ小さな圧迫感や心労の蓄積が脾臓や膵臓の負担となり、自律神経の不均衡を招き、体調不良につながります。心の疲れに目をつぶらずに、心身をいたわりましょう。
夕食の時間をあまり遅くしないようにして、季節の野菜のスープなど、暖かい物を取り入れましょう。この時期旬のエダマメやソラマメ、また、大豆など、豆類を上手に使いましょう。豆類は炭水化物(糖質)、たんぱく質、ビタミン、ミネラル等をバランスよく含んでいるうえ、食物繊維やポリフェノールなども豊富に含まれているので、疲れた身体を調整する食材として最適です。
そして、まだまだ、高い温度に身体が慣れていないので、熱中症にも気を付けてください。暑さに段々と身体を添わせるように、軽い運動や湯船に浸かるなどして、発汗を促して体内温度を調整できるよう、本格的な暑さに備えましょう。
この暑さへ向かう日々を快適に過ごすためには、しっかり眠ることも大事なのはもちろんのことです。でも、夜から朝への気温の変化も大きく、眠りにつく頃には少し寒い気がしても、目覚める頃には少し汗ばむような朝もあり、温度調整が難しい時期です。
衣類の衣替えのように、寝具も夏用に変えてみてはいかがでしょう?
綿や絹は天然素材として、吸水性や保温性も高く、肌に沿う優しさがあり、繊維としての強さもあり、寝具に適した素材です。でも、夏はもう少しパリッと、風通し良く、爽やかな素材「麻」を取り入れてみませんか?
綿や絹が登場するよりずっと前、日本の歴史では縄文時代の頃には、麻はすでに繊維として衣類などに使用されていました。もともと自生していた大麻(たいま=ヘンプ)を利用していたものと考えられていますが、その後、海外から亜麻(あま=ラミー)や苧麻(ちょま=リネン)などが渡来し、それらを一般的に麻(あさ)としています。
麻素材が夏の繊維として適している点は多く、通気性、放熱性、換気性に優れ、洗濯に強く、乾くのが早い…、と、完璧です。
肌触りのしゃり感や涼しげな様子が、夏の暑さを和らげます。夏の着物の素材としても、そのさらりとした着心地が重宝され、新潟県の小千谷縮(おぢやちぢみ)や越後上布(えちごじょうふ)、沖縄県の宮古上布(みやこじょうふ)などは国の無形文化財として指定されています。
祖父が真夏に麻のスーツを着ていたことを思い出しました。私たちは「おじいちゃま、おズボンしわくちゃ!」なんて、笑っていたけれど、祖父はおしゃれだったのね。上着の袖をまくり上げて、手を洗っていた祖父の笑顔の景色が蘇ります。
ということで、早速、麻の枕カバーを使ってみました。そのさらりとした涼感が素敵です。今年は涼やかに眠れる…かも。この夏はもっと麻素材に目を向けて、自然素材の力を借りて、少しでも健やかに過ごしたいと思います。
ずっと頑張って刺していた麻の葉模様の麻布巾が出来上がりました。来る夏の暑さを楽しみに、そろそろ眠りにつきたいと思います。
皆様、今夜もぐっすりお休みください。
染谷雅子
ガラス作家・アロマセラピスト 染谷雅子
ギャラリーはなぶさ https://www.hanabusanipponya.com
作品名:フュージンググラスペンダントトップ、ブローチ「夏の扉」