急に夏の喧騒が遥か彼方に思えるような清やかな響き、二十四節気は白露(はくろ9月8日)を迎えます。あんなに楽しみにしていた真夏の目くるめく日々は、観測史上初という熱気の中で、溶けてしまったように想い出へと変わって行きました。七十二候は、草露白 (くさのつゆしろし9月8日~12日)、鶺鴒鳴(せきれいなく9月13日~17日)、玄鳥去(つばめさる9月18日~22日)と続きます。秋の気配が深くなり、夕方から夜にかけては空気が冷えて、小さな真珠の粒のような露が草木に宿り、朝陽に美しく輝きます。初秋の気配の中、尾をふりふり歩くセキレイの声が聞こえ、子育てを終えたツバメは南に飛び立ってゆくのです。そんな、秋への空気の変化の中、鳥たちの営みに季節の移ろいを感じる候となります。
残暑厳しいこの夏ですが、時々感じる爽やかな空気の流れや、昼間の日差しの色に確実に秋を感じるこの頃です。湿度が少しずつ下がり始めるこの時期、真夏の紫外線や冷房による乾燥が、皮膚や髪、内臓に至るまで残っている身体には、その手入れと、さらなる乾燥からの予防を心がける必要があります。
肌や髪の手入れは簡易にせず、保湿のひと手間を加えましょう。夏の間に弛緩した毛穴の手入れも忘れずに、きちんと洗顔したあと、収れん化粧水などを使い軽いパッティングやパックなどをして、毛穴を引き締めます。手入れの最後には必ずふたをすること。肌ならクリームを、髪には保湿オイルなどで、さらなる蒸発を防ぎます。
喉や肺の乾燥も気になります。この夏は咳が多く出る夏かぜが流行ったようですが、乾燥することにより、咳が出たり、痰(たん)や鼻水の制御がうまくゆかなくなり、ウイルスの侵入を許すことになるのです。
細胞の新陳代謝を正常に保ち、乾燥予防に役立つ食材は、豚肉やうなぎ、卵、大豆製品、カツオやマグロなどのビタミンBを含む食材です。また、以前にも触れた、山芋や里芋、オクラ、モズク、納豆、なめこなどのネバネバ食品には保水力を持つ粘性物質を含み、それらは細胞を保護する役目を果たしています。
これらの食材を使って食事を楽しみ、体の内側からの保水も心がけてください。
少しずつ太陽が低くなり、空の色が濃くなってゆく秋へ向かう空。雲の形も変わってゆきます。まさに真夏を体現する、もくもくした入道雲=積乱雲は夏休みの空の主役。夏の午後、気づくと空の淵に乱立する入道雲は、即座に「夏休み」という言葉を連想させます。他に、かみなり雲、かなとこ雲などの俗称があります。積乱雲は空の低層部から高層部までの広い範囲の気圧の変化により発生する雲です。その形の変化はとても面白く、見ていて飽きません。特に夕方近く、西日が雲に反射して、紅色の縁取りがくっきりと表れ、風に乗りどんどん大きくなったり、ちぎれてほろほろとほぐれたり、他の大きな塊にくっついたりと、まるで龍のような生き物が戦っているようで、合わせて脳内物語が進みます。
これから、だんだんと積乱雲の発生は減り、代わって、すじ雲=巻雲、うろこ雲=巻積雲、うす雲=巻層雲、ひつじ雲=高積雲、おぼろ雲、いわし雲=高層雲、うね雲=高積雲、きり雲=層雲など、青さが増した秋空に、気圧が安定した大気の中層から高層で発生する雲へと変わってゆきます。
それにしても、雲の名前の美しいこと。空を見上げてその雲の形に気持ちを置き、生活に結び付いた事象を連想して名づけるという、先人の想像力とその感覚がとても面白く、なるほど、ひつじ雲は羊の群れのようだし、うろこ雲はまるで龍のうろこ(見たことないけれど…)、そして、いわし雲なんて、きっと漁に出て出会ったイワシの群れのそのキラキラ光る腹と深い海の色の美しさを空に見たのでしょう。
夕の空、見上げれば、低い空に夏の名残の入道雲が並び、同時に少し濃い色になった空の真ん中には箒で履いたようなすじ雲といわし雲が見えて、空もしっかり秋の訪れを教えてくれていました。
いわし雲か…、そろそろ秋刀魚ご飯の季節だなあ。それに、この空気感、運動会の栗ご飯を思い出すなあ…。確かに、秋は来ていますね。
食欲の秋到来を楽しみに、そろそろ眠りにつきましょう。
皆様、今夜もぐっすりお休みください。
染谷雅子
ガラス作家・アロマセラピスト 染谷雅子
ギャラリーはなぶさ https://www.hanabusanipponya.com
作品名:ステンドグラス ティッシュケース