小春日和の日にほっとしたかと思えば、コートを着たくなる寒さ…。二十四節気の小雪(しょうせつ11月22日)を迎えようとしている今は、冬の訪れをすっかり気付かせてくれます。七十二候は、虹蔵不見(にじかくれてみえず11月22日~26日頃)、朔風払葉(きたかぜこのはをはらう11月27日~12月1日頃)、橘始黄(たちばなはじめてきばむ12月2日~6日頃)、と続きます。日中は暖かい日もあるものの、場所によっては雪が舞い始める頃となり、いよいよ冬到来です。日照時間が短くなり、太陽は低くなるため、雨上がりの虹が見えることはなくなり、風は北風に代わり、木々の葉を冷たく吹き払ってゆきます。そして、その初冬の風景に色を添えるのは橘をはじめとする柑橘系の暖かい色の果実。これから寒さが増すであろう冬の始まりの大気の気配(けはい)と、その中で色づく自然の営みを表す候となります。 木枯らし 朝、布団から抜け出すのがつらくなりますね。本格的な寒さへ向かう中、気候の変化に対応して体温を調整することは体の熱量を消費します。体力を温存するよう、しっかり食べて、快適な環境で充分な睡眠時間を摂るようにしましょう。就寝中に腹部を冷やさないよう注意です。冷えにより胃腸の機能が弱ってしまうと、栄養が体に行き届かず、結果的に、自律神経の乱れにつながり、消化不良や食欲不振を招きます。そのような不調を感じたら、消化が良く、胃腸の働きを高めるような食材を使って、暖かい食事、ネギやハクサイ、ホウレンソウ、シュンギクなどの旬の野菜を豊富に使った鍋料理などで養生を。寒さに対するストレスの対策としては、抗酸化作用のある食品を積極的に取り入れましょう。冬の代表果物、ミカンは手軽に取れるビタミンの宝庫で、風邪予防にも効果的です。 鍋料理 炬燵(こたつ)にミカンは、冬の幸せ景色としての一枚となります。秋のうちから出回り始め、春まで様々な収穫期を持つ種類が出回ります。日本で収穫されているミカンの約7割が日本を原産とする温州みかん(ウンシュウミカン)で、品種は100種類以上と言われています。ミカンの主成分はビタミンCで、一日に2~3個食べれば、一日摂取必要量のビタミンCを摂ることができます。言わずと知れたビタミンCの効能ですが、抗酸化作用があり免疫機能を高める働きや、ストレス低減、肌の健康を整える作用などもあります。冬の乾燥した空気に身体も肌も守ってくれるミカンの大切さを改めて確認です。 みかん 引き続き、先月の伊賀上野への旅行のおはなし。

旅行といえば、楽しみは地元の食。ところ変われば、いろいろな面白い食に出会いました。まず、最初に出会ったのが、「丁稚羊羹」。普通の水ようかんをもう少しさっぱりさせた感じで、喉越しの良い爽やかな味。盆地で乾燥する伊賀の冬、暖かくした部屋でいただくのが伊賀の食べ方だそうです。江戸時代後期に丁稚が練り羊羹を作った後、鍋に残った羊羹に水を混ぜ、水ようかんのようにしたものを食べたことからこの名がついたようです。 丁稚羊羹 伊賀と言えば?忍者でしょ。忍者の歴史も興味深いものですが、忍者食も面白い。忍者は室町時代から江戸時代、大名や領主に仕え、または独立した組織で、諜報活動を主に、それに伴い破壊活動や浸透戦術、暗殺などを仕事としていました。普段は農民として普通に暮らしていますので、食事は一般的で、稗(ヒエ)や粟(アワ)、山菜などを食べていたようです。そして、いざという時のためには、農耕器具を使った対戦武器を使って戦いました。長期の諜報活動につく際には、穀類と薬草などを混ぜて乾燥させた、兵糧丸という保存食を携帯しました。面白そうでしょ。 山菜 数ある伊賀の名産品の中に、とても固いせんべい「かたやき」や、射こみで刻んだ野菜が入っているウリをたまり醤油に1年から2年漬け込んだ「養肝漬」があります。「かたやき」は小麦粉をとろろ芋でつないで焼いた、少し甘味のあるとても固いおせんべいです。「養肝漬」は濃いたまり醤油に漬けてあるので、それはそれはしょっぱいお漬物ですが、滋味がありご飯が美味しくいただけます。これらは長期保存できるもので、元をたどれば忍者食と言われています。土地の歴史と共にその地の食の歴史も様々な物語があり、それを遡ってみると思いがけず垣間見ることができる、その文化や先人の知識、現在への繋がりがあります。そんなことに気づき嬉しくなるのも旅の醍醐味の一つです。皆様もぜひ旅地の食文化を辿ってみてください。 養肝漬

そういえば伊賀忍者の国三重県もミカンの産地です。忍者たちも諜報活動中にのどが渇いてミカンを食べたかもしれない…、きっと。ぐるぐると、また、そんな妄想が広がります。あ、でも、そろそろ、ドロンしますかね。

皆様、今夜もぐっすりお休みください。

 

染谷雅子

 

 

 

 

ガラス作家・アロマセラピスト 染谷雅子
ギャラリーはなぶさ https://www.hanabusanipponya.com

作品名:ステンドグラス 「ガラス帯留め」

帯留め