少しずつ、夜になるのが遅くなり、春の気配を想うこの頃ですが、この時期、気温は最も低くなり、冬の本気を感じます。二十四節気は大寒(だいかん、たいかん1月20日)を迎えています。七十二候は、款冬華(ふきのはなさく1月20日~24日)、水沢腹堅(さわみずこおりつめる1月25日~29日)、鶏始乳(にわとりはじめてとやにつく1月30日~2月3日)、と続きます。真冬の緑少ない景色の中で、ほっと一息、暖かみを感じる黄色や白の丸いフキノトウの花が咲く一方、真冬の大気は沢の水さえ厚く凍らせます。そんな中でも、日の緩みを捉えるニワトリは卵を産みはじめます。季節の巡りの接点に近づき、極寒の中にも次の時間への期待を感じさせる候となります。 今年は暖冬も手伝って、例年に比べると過ごしやすいとはいえ、冷たい風が吹く日は多く、身体はキュッと固くなり寒さから守ろうとします。肩や首あたりが凝りがちになり、体を守る姿勢は背中を丸めてしまうため、猫背になってしまいます。姿勢が悪くなると、腹横筋や腹斜筋、腸腰筋などのいわゆる、体幹の筋肉が縮まり、肋骨の動きが悪くなり、充分な呼吸ができなくなります。頭痛や腰痛の原因になるだけでなく、精神的にも鬱屈感を感じてしまいます。散歩をするには寒くて、つい、運動不足になりがちですが、短い時間でも、ストレッチを毎日取り入れるだけで、身体は緩みます。首、特に前面の胸鎖乳突筋を伸ばす、また、肩甲骨を動かすねじりの姿勢を取り入れてゆっくりと前屈する、などのストレッチ運動をすることで、腹部や胸部の筋肉を伸ばし緩ませることができ、充分な呼吸が楽にできるようになります。時々姿勢を正して、腹筋をしっかり使い、深呼吸をするだけでも体は目覚めます。ぜひ取り入れてみてください。 春の色と言えば、ピンクや桃色そして緑、鮮やかな若い緑を想像しますね。あと、黄色もこの寒い時期、春を待つ色として、暖かさと優しさ、そして、活動の季節への橋渡しの色の様な気がします。緑が始まる前の色。タンポポ、スイセン、レンギョウ、ミモザ…、近い春を思わせる花々ばかり。
特に、フクジュソウとフキノトウは早い春をつれてきてくれる大好きな花です。フクジュソウは雪国に春を告げる草花であるため、「春の使者」とも呼ばれます。江戸時代には「福告ぐ草(ふくつぐそう)」と呼ばれ、縁起の良い花として、栽培されていました。 一方、フキの花は、観賞用というよりは、その蕾を天ぷらや和え物としていただく、春を代表する山菜、フキノトウとして知られています。でも、自然に咲くフキの花は可憐で、そのまま帯留めにでもできそうな、半球型の花姿が柔らかさと暖かさを教えてくれます。フキは日本原産の植物で、平安時代には栽培されていたとされていて、平安の人々の食卓にもフキは数ある山菜の一つとして上がっていたようです。どんな調理方法だったのでしょう?どんな調味料を使って、どんな惣菜だったのだろう?どんなふうに食卓を囲んで、どんな話をしながら食事をしたのだろう?…。と、またまた、妄想の森に迷い込みました。 さて、そのフキ、食材で、フキノトウとしていただくときは固い蕾が選ばれますが、花が咲くとふんわりとしています。フキは雌雄異株なので、黄色く咲くのは雄株、白く咲くのは雌株です。フキは花が終わると、地下茎から花茎とは別に、葉柄(ようへい)が伸び、おなじみの大きな葉っぱに太い茎が現れるのです。 春の盛り、摘み取られなかったフキノトウがすっくと成長し、その蕾を開き、さわさわと風になびいて揺れているのを見たことがあります。葉っぱもたくさんついていて、にわかにはフキだということがわかりませんでした。でもその、何か言いたげな姿は、冬の寒さを土の中で耐え、虎視眈々と春を告げる準備をして、次へとつなぎます、「私は以前からここにいます」とでも…、語っているようで、その黄色い花と土や水や大気の力、自然の力に感動しました。 大寒が過ぎれば節分、そして立春。今年もまた春がやってきます。暦の輪の中にひっそり置かれた私たちは、自然の力に育まれ、時には翻弄され、過去の人々の知恵に支えられ、日々を数えてゆきます。私たちの日々が未来に何を残すのか、また次に訪れる、新しい立春からの輪の中で想い巡らせましょう。 まだまだ寒い冬の夜ですが、春の野の花々の色を想いつつ、そろそろ眠りにつきます。
皆様、今夜もぐっすりお休みください。
染谷雅子
ガラス作家・アロマセラピスト 染谷雅子
ギャラリーはなぶさ https://www.hanabusanipponya.com
作品名:「フュージンググラス 雪うさぎブローチ」