春の始まりはあんなに暖かかったのに、二十四節気、啓蟄(けいちつ3月5日)を迎えた今頃、冷たい風が上衣をもう一つ手に取らせます。三寒四温は冬の終わりから春先の気候を表現する言葉ですが、まさに、その寒暖差が激しい、季節の変わり目となります。七十二候は、蟄虫啓戸(すごもりのむしとをひらく3月5日~9日頃)、桃始笑(ももはじめてさく3月10日~14日頃)、菜虫化蝶(なむしちょうとなる3月15日~19日)と続きます。冬の間地中にいた、蛙や爬虫類たちは春を知り、地上へ出て動き出し、桃の蕾はほころび花が咲き始め、菜っ葉を食べて育った青虫はさなぎの時期を過ごし、蝶となり春の空を舞います。そんな、大地と植物そして、それらを繋ぐ生物たちの営みを表す候となります。 蛙 気温が急激に変化する寒暖差は、体調に影響を及ぼすことがあります。特に季節の変わり目、この時期には、体が突然の寒さや暑さに適応しようとするために「寒暖差疲労」と呼ばれる体調不良に陥ることがあります。気温の急激な変化に対応するために、発汗や筋肉の熱生成などで体温を一定に保つべき自律神経の働きが乱れて、体に疲労が蓄積されて体調不良を引き起こす現象です。特に前日よりも5℃以上の気温差がある場合に影響が出やすくなるとされています。主な症状としては、頭痛、肩こり、腰痛、めまい、倦怠感、食欲不振、便秘や下痢、寝つきの悪さ、手足もしくは全身の冷え、むくみ、顔のほてり、気分の落ち込みやイライラなどがあり、心身共に影響を及ぼす可能性もあります。

寒暖差疲労を避けるためには、まず、室内と室外の温度差を、7℃以下に保ち、急激な温度変化を避け、自然なリズムで体温調整することです。軽い運動やストレッチ、入浴して体を温めることは自律神経を整えるために効果的です。また、体を温める食材、 たんぱく質、鉄、ビタミンB12を意識して摂取しましょう。 温度計 どの季節でも、その季節の移り変わりには気候が安定せず、温度差が激しくなったり、真夏や真冬でも、室内と室外の温度差が大きくなったりと、結局、一年中、寒暖差疲労はつきまといます。バランスの取れた旬の物をしっかり食べて、適度な運動を取り入れ、良質の睡眠を充分にとる、ということが日々の基本ということ。さらに、季節の移ろいに気持ちを添わせ、まわりを見渡す心の余裕があれば、心地よく過ごせそう。 室内 桃の花が咲きます。日本の花を代表する花、梅、桜、と供に、春を迎える気持ちに嬉しい花、桜が咲く少し前、梅のちょっと後、この隙間を桃の花が埋めてくれます。雛祭りは過ぎましたが、桃の少し濃い色と賑やかな咲きっぷりに、女児のお祭りが桃の節句と言われることが誇らしい心持ちになります。 桃の花

バラ科モモ属の、桃は中国から現在のイラン、アフガニスタン辺りが原産とされ、日本には弥生時代以前に伝来しているそうです。食用の他に祭りや神事にも用いられたそうで、古事記にも黄泉の国のものたちを追い払うために桃の実を使った、という話があります。江戸時代には薬用や鑑賞用としてさらに広まり、食用として栽培されている品種は明治時代に導入されたものからの品種改良です。桃太郎の伝説もあるように、昔の人もその花にも実にも何か特殊な不思議な力を感じたのでしょう。そんな桃の花の力の加護により女児の健やかな成長を祈る行事、桃の節句に桃の花を飾ります。桃の花は美しさだけでなく、伝統や伝説として、文化的な意味も持ち合わせているのです。 桃の節句 そういえば、英語で、“She is a peach.” と言えば、「彼女は素晴らしい人、素敵な人」という意味です。万国共通、桃は女性の味方、ということかしら?

小さい頃、熱が出たり、注射したり、元気がなかった時には、桃の缶詰を開けてくれました。食べやすく小さく切られて、ガラスの器に盛られた白い桃。柔らかく、良い香りがして、ふんわりした甘さと冷たさに、応援されているような気がして、元気になったものです。あの頃は、花より団子だったから、缶詰でも桃の力に助けられたのかもしれないけれど、確かに、桃の花が活けられているのを見ると、フッと気持ちが引きあがって元気になるような気がします。きっと、桃の力。 桃の缶詰 もう花桃は咲いたかしら?近くの公園に明日見に行ってみようかな…、魔法にかかってみようかな…。どんな魔法にかかるのか続きは夢で見ましょうか。そろそろ眠りにつこうと思います。

 

皆様、今夜もぐっすりお休みください。

 

染谷雅子

 

 

 

ガラス作家・アロマセラピスト 染谷雅子
ギャラリーはなぶさ https://www.hanabusanipponya.com
作品名:ステンドグラス帯留め「蝶々 野花」

染谷雅子のガラス作品「ステンドグラス帯留め蝶々野花」