一月居ぬる、二月逃げる、三月去る、と、全くその通りで、あっという間に4月。桜も咲き、春爛漫ですね。あなたの傍の春はどんな様子ですか?
私の春は、目にまぶしいレンギョウの満開と赤紫のモクレンの開花、そして、クリスマスローズの白い花とすっくと立つ黄色いスイセンが、一度に目に入る朝の幸せです。当然のことながら、それらがほんの数日で一堂に咲きそろう時期を迎えること、その変わらぬ自然の定まりに、この歳になっても、また心躍ります。
二十四節気は春分となり、七十二候は雀始巣(雀はじめてすくう)、桜始開(桜はじめて開く)、雷乃発声(雷すなわち声を発す)となり、雀は巣作りを始め、桜が咲き、季節の移り変わり目で気候は安定せず、遠くで雷が聞こえる、そんな季節です。
実際、寒暖差は大きく、また、年度の変わり目で、生活環境が変化することも多く、身体には想像以上の負担がかかります。それが、最近よく聞く言葉「春バテ」の原因です。
この「春バテ」、軽んずなかれ。なんとなく過ごしてしまうと、大人の5月病や慢性の不定愁訴へとつながってしまいます。年齢を重ねればなおのこと。
食事は摂取、運動は燃焼、そして睡眠は調整と再生、毎日の生活の中で、当たり前のことですが、これらの流れと均衡を保つことだけが、身体を作ってゆくことになります。
食べることを、思ってみましょう。
You are what you eat. あなたはあなたの食べる物である(できている)。
改めて考えると、なるほど…、と思う、単純な表現です。それは大変、とも思いますよね。でも、そんなに深刻に考えないで、季節のもので、きれいな食卓を楽しむということが一番簡単な方法だと思います。
家庭料理って、なんとなく茶色くなってしまいます。醤油を使うことが多いからでしょうね。今日も茶色いなー、と思う時は、グリーンサラダにトマトを添えて。さらに、もう一つ彩りを添えたいときのおすすめは…。
まずは、台所菜園。ダイコンやニンジンやカブなどの根菜の皮をむくときに、切り落とした葉っぱのついた部分や、根っこを残したネギなどで、水耕栽培をします。毎日水を取り替えてあげると、すくすく伸びて、時々花まで咲いたりもします。必要な時に伸びてきた新芽や葉っぱを使います。茶色いおかずもあっという間にはなやかに、目にもおいしく、食事中の話の種にもなります。
茶色と緑と…、もう一つ色が欲しいなー、と思う時は、ニンジンやトマトなど、冷蔵庫に残った赤色野菜をお出汁で煮て、牛乳を入れて、ミキサーにかければ、優しい色のお椀のできあがり。
これで、茶色いおかずでも、目にもきれいな彩り膳となります。簡単なおかずでも、そんなことを面白がって、ついでに心の栄養も摂りたいものです。
季節の食材を取り入れることも、楽しみの一つです。
この季節、外せないのは春の山菜。
万葉集にも読まれている山菜摘みです。昔からから、日常のお膳に取り入れられていたようで、春の訪れの喜びは古の人々と同じ心持ちであることが、嬉しく思います。
山菜の若芽には体内の酸化抑制効果や活性酸素を排出する効果などのある、苦みやえぐみ、いわゆる、ポリフェノールが多く含まれています。
素材の味を生かすよう、簡単な方法で、おすすめはタラの芽やフキノトウの天ぷら、コゴミやワラビのお浸しや胡麻和え、ゼンマイの炒め物など。季節の山菜にはビタミンB群やビタミンC、カリウムなど、また、食物繊維も豊富です。そのほろ苦い春の味は、この季節の体に、喝を入れてくれるとともに、目にもきれいな新芽の緑と鼻孔を抜ける蒼い香りも感じ、五感で春を受けいれることができます。
栄養素の配分を考えての毎日の献立作りはとても大事なことだと思いますが、もう一つ、季節をとらえた彩り膳を楽しむことは、身体を作る入口となる「食事=摂取」の部分をより鮮やかにするとともに、この季節、心身への春バテ撃退にもつながることでしょう。
私が好きな春の食べ物仕事の一つは、フキの下ごしらえ。酢水から下茹でしたフキ、すじをちょっとずつ引っ張り出して、まとめて、つまんで、一気に、スーっと、つるっと。あー、気持ち良い。春爛漫。
染谷雅子
ガラス作家・アロマセラピスト 染谷雅子
ギャラリーはなぶさ https://www.hanabusanipponya.com
作品:さくらペンダント