今年の夏も頂上を迎えます。と思いつつ、日の入りが少しずつ早くなっていることにも気づいていて、秋がそろそろと控えている夏の盛りです。二十四節気は、大暑(たいしょ7月22日)を迎えます。七十二候は、桐始結花(きりはじめてはなをむすぶ7月22日~26日頃)、土潤溽暑(つちうるおうてむしあつし7月27日~31日頃)、大雨時行(たいうときどきふる8月1日~6日頃)と続きます。箪笥や箱などで身近なキリは初夏に咲いた花が結実する頃となり、その木を支える大地は大気に満ちる湿気で潤い、植物のさらなる成長を促し、その湿度に満ちた大気は時々夕立となり強い雨を降らせます。そんな、植物の成長と大気と大地の真夏の水循環の繋がりを表すような候となります。
真夏の力が最高潮に達するこの時期、エネルギー循環が盛んになり、気温と湿度はどんどん上がります。自然界の強さは、心身を疲弊させ、体に熱や湿度がこもりやすくなり、やる気が出なかったり、眠りが浅くなったりという不調を招きます。さらに、それらにより、胃腸の働きの低下や老廃物排出作用の滞りなども起こり、いわゆる、夏バテの状態につながることもあります。心と体のバランスをとれるような食生活を心がけるとともに、暑さに抗うことなくエアコンを上手に利用して、熱が体にこもらないよう心がけましょう。
夏の涼を求めて、皆様は何をなさいますか?涼しい所へ旅行に行く?素麺やビール、かき氷やアイスクリームなど冷たい飲み物や食事で内側から冷やす?エアコンの効いた部屋で読書?または反対に、熱いスープやカレーなどで汗をすっかり出し切る?水分を摂りながらの運動?…などなど、様々な方法で涼を感じ、少しでも健やかに過ごしたいものです。
図書館やショッピングモール、映画館なども、興味を満たしつつ涼を享受できる素敵な場所です。そして、私のお勧めは、美術館。美術で涼む心地よさ、幸せな時です。
全国の美術館数は2018年の情報で1000館以上あり、そのうち都内に一割以上が集中しています。公の大きな美術館から、個人が営む小さなものまで、多彩な美術館が点在しています。それぞれの美術館に個性や特徴があって、お好み次第、様々な展示が待っています。更に、少し足を延ばしてドライブがてら近県の美術館を探せば、地方色豊かな展示に出会えもします。
好みの美術で気持ちは整い、その背景なども知ることができ、お食事するところもあって、お手洗いもきれい、そして、なにより涼しい。完璧です。
この夏はシュルレアリズムの風に吹かれています。始まりは初夏、大型連休直前に、福島県にある諸橋近代美術館で、シュルレアリズムの巨匠サルバドール・ダリの作品を堪能してきました。ダリの作品所蔵数が世界第4位という圧巻の見ごたえでした。大好きなダリ作品にとっぷりと浸った幸せな一日でした。
そして次はちょっと暑くなったころ、東京都美術館で、デ・キリコ展へ行き、不思議な、実はよく夢に出てくる、静謐でいて、無重力のような、湿度のない世界(そんな感じがするのです)に、またも浸りきって過ごしました。
そして、梅雨入りした蒸し暑い雨降りの日に、大倉集古館にル・コルビジエ~絵画をめぐって~、へ行きました。建築家として名を馳せているル・コルビジェの美術家としての面に着目した展覧会です。なるほど、あの合理的ながら暖かみのある建造物の素となるものはこの目線だったわけです。
数か月の間に、ほぼ同時代の、ある華々しい潮流を作り上げた芸術家たちの成長と変化と成熟の過程を心にとどめた、この夏でした。
面白かったことは、共通したモチーフ「掌(たなごころ)」です。作り出す手、守る手、すくい、とどめて、送る、手。すべての表現を通過するこの道具、手。改めて、愛おしく、自分の表現をあたらためて見つめなおす機会ともなりました。いずれも、涼しく、静かで、心地よい美術館の中で、冷静に。
残暑の日々を、次はどこの美術館で涼もうか…、などと考えつつ、そろそろ眠りにつこうと思います。
皆様、今夜もぐっすりお休みください。
染谷雅子
ガラス作家・アロマセラピスト 染谷雅子
ギャラリーはなぶさ https://www.hanabusanipponya.com
作品名:「ステンドグラス サンキャッチャー」