「暑中お見舞い」は「残暑お見舞い」へと移る季節の変わり目、立秋(りっしゅう8月7日)を迎えています。でも、秋は夏の終わりの扉の外側にそっと立ったぐらいで、まだまだ暑さは残ります。七十二候は、涼風至(すずかぜいたる8月7日~11日頃)、寒蟬鳴(ひぐらしなく8月12日~16日頃)、蒙霧升降(ふかききりまとう8月17日~22日頃)と続きます。夏の名残、まだまだ昼間の太陽はじりじりと照りつけ、肌を焦がしますが、少し早くなった夕暮れ頃に吹く風に、ふと涼しさを感じ、気づけば、蝉の声はヒグラシの声にかわり、大気に満ちた水蒸気は朝夕の少し落ち着いた温度で、深い霧になりたなびくことがあり、大気の変化や空気の流れに、そして音として、秋の気配を感じる候となります。 霧

暦の上では秋到来、と言われても、目の前は真夏の世界が広がり、残暑は今年ももう少し続きそう。長期の暑さに疲れる毎日は気づかぬうちに心身を疲弊させ、いわゆる、夏バテを招きます。その上、お盆のお休みは予定が立て込みがちになり、食生活や睡眠時間も乱れがちになり、胃腸の不調が出やすくなります。引き続き、暑さを上手に避けて、紫外線対策、乾燥対策を心がけ、生活習慣に気を配るようにしましょう。そして、体を冷やすことは避けたいのですが、食事に関しては、体の熱を冷ます働きの高い食材を選び、過食や拒食にならないような工夫をして、自分自身を思いやることを忘れずにいてください。 日傘

とは言いつつ、ついつい自分を甘やかしがちになってしまう夏休みです。涼しい部屋で、冷たい物をいただく幸福感も夏の楽しみの一つですよね。最近、脚光を浴びている「かき氷」もその一つ。 何の味にしようかと悩む楽しみ、お願いしてから手元に来るまでのワクワク、遠くに聴こえるシャリシャリと氷を削る音、目の前に現れた白い山に夏の印がつけられたようなシロップの色と氷のへこみ、こぼさないように少しずつ崩す緊張感、きらりと光る氷の粒、口に運ばれる冷気、シロップの甘さと氷の冷たさがするりと舌に流れる快感、冷えたスプーンの刺激。 最初は静かな氷の山も、時間の経過とともにサクサクが聞こえるようになり、さらにシャクシャクからジャクジャクと変化する音も涼しく、そして、太陽の色のような、様々に華やかな色も夏らしく、どこを切りとっても夏の特別一級品。 かき氷

清少納言が996年(長徳2年)から1001年(調歩年)頃に記したとされている「枕草子」、第42段「あてなるもの(上品なもの、高貴な物、優美な物、の意)」に、カルガモの卵や水晶の数珠、フジの花などに並び、かき氷?が登場します。

「削り氷に甘葛(あまづら)入れて、新しき金椀(かなまり)に入れたる」

という文があります。削り氷は氷を細かく削ったもので、甘葛はツタの樹液を煮詰めて作る甘味料、それを傷一つないきれいな金属のお椀に入れて楽しむのです。その氷の粒にかかった蜜の色、金属の椀の表面は冷気で白くなり、涼しさを運びます。なんと高貴なこと。もちろん、この頃、氷が手に入るのは貴族だけで、貴重な食べ物だったことでしょう。 金椀

江戸時代になると氷を氷室で保存する方法が発達しましたが、通常は朝廷や将軍家などに管理されており、庶民の口には届かなかったようです。さらに、製氷技術や削氷機の開発により、明治時代には広く一般に親しまれたようです。今や日本発のかき氷は、世界中の夏に涼を運んでいます。

ちなみに、よく見る青地に赤い「氷」文字、波や千鳥があしらわれた旗は、明治時代に粗悪な氷が販売されることを取り締まるために内務省から交付された、氷の産地や販売者が示された営業許可証で、業者はこののぼりをあげることが義務付けられていたそうです。今に続く、素敵なデザインです。 旗

千年以上前から続くこのおたのしみ、やっぱりこの暑い夏を乗り切るために、「あてなるもの」に救いを求めてしまいます。ちょっと残っていた氷もすっかり溶けてしまい、その氷水の表面に、夕方の太陽がきらりと光りました。 氷水

さあ、次はきっと金属の器に氷を入れてみよう…、蜜は砂糖を煮詰めてべっこう飴色にしてみようかな?いやいや、梅シロップもいいな…。涼を求めて、更なる「あてなるもの」を想いつつ、そろそろ眠りにつこうと思います。

 

皆様、今夜もぐっすりお休みください。

染谷雅子

 

 

 

 

 

ガラス作家・アロマセラピスト 染谷雅子

ギャラリーはなぶさ https://www.hanabusanipponya.com

作品名:「レモン色のペンダントトップ(シルバー枠)」 染谷雅子のガラス作品「レモン色のペンダントトップ(シルバー枠)」

 

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パジャマに着替えて…涼を求めて