気づいてはいたのです。暑さは残っていても、それは夏の忘れ物。二十四節気は、昼と夜の時間がほぼ同じになる、秋分(しゅうぶん9月22日)を迎えます。この日を境に夜が長くなり、秋から冬へと季節が移るのです。七十二候は、雷乃収声(かみなりすなわちこえをおさむ9月22日~26日頃)、蟄虫坏戸(むしかくれてとをふさぐ9月27日~10月1日頃)、水始涸(みずはじめてかるる10月2日~7日)と続きます。あんなに縦横無尽に轟き渡った雷の騒がしさは去り、気温が低くなった戸外、虫などは土に隠れ、蛇やカエルなどの小動物たちは冬眠の準備を始め、稲の刈り入れを終えた水田は水が抜かれる。そんな、冬へ向かう秋の真ん中の大気の変化、それによる動物たちの行動と人の暮らしの変化を表す候となります。 刈り入れを終えた水田 長い残暑とは言われているものの、9月も中旬になり大気の変化は明らかで、気温が徐々に低下し、それに伴い湿度も下がるので、引き続き、乾燥に注意が必要です。皮膚や頭髪のみならず、鼻腔や喉の乾燥にも気をつけることが大事です。鼻やのどの粘膜が乾燥してしまうと、抵抗力が低下し、ウイルスが防御機能を突破し体内に入り込みやすくなり、温度差と相まって風邪をひきやすくなります。そして、体内の乾燥が進むと肺の機能低下へ繋がり、軽い風邪の症状がなかなか治らず、深刻な肺疾患を招く恐れもあります。就寝前に簡単な吸入をお勧めします。マグカップ一杯のお湯にお好みの精油をほんの数滴たらし、静かにその湯気を吸い込みます。ラベンダー、カモマイル、フランキンセンス、などの精油は、保湿効果はもちろん、呼吸器系不調に対して、鎮静、収れん、鎮咳などの作用が期待できます。その上、安眠効果もありますので、もってこいです。これから部屋で暖房を使用するようになると、空気中の水分量はそのままなのに室温だけ上がるので、部屋の空気は一気に乾燥してしまいます。今のうちに、鼻腔、喉、肺への保湿もこころがけましょう。 マグカップ一杯のお湯 まだ暑さは残りますが、気づけば空は高く青く澄み、うろこ雲が並び、その先には刷毛で曳いたようなすじ雲がたなびき、きれいな飛行機雲が一筋。秋の最中に立っていることを知らされます。 この秋の空気には少し寂し気な旋律が良く合います。湿度が下がり、音がすっきりと耳に届くような、そして、その音が示すことがすっきりと心に届くような気がします。例えば童謡や唱歌。「夕焼け小焼け」、「紅葉」、「うさぎうさぎ」、「旅愁」、「赤とんぼ」、「村祭り」、「虫の声」…などなど。 子供の頃、きれいな色でそれぞれの歌詞にあった魅力的な絵が描かれた童謡歌集を母が揃えてくれて、妹と次から次へと時間を忘れて一緒に歌ったものです。 すじ雲 童謡とは、子どもの歌の総称として使われ、大正期に雑誌「赤い鳥」などによって発表された新しい子どもの歌を指します。 一方、唱歌は、公式名称ではありませんが、明治から昭和時代にかけて文部省(現文部科学省)により近代日本の初等教育における音楽科の教材として作られた歌曲、または、これに関連して民間で作られた歌曲とされています。童謡や唱歌は西洋音楽のメロディーを取り入れて作られています。 だから、懐かしさと同時に親しみやすく、馴染みやすく、憶えやすいのです。親しんだ唱歌は季節と思い出に結びつき、記憶に残ります。今でも、満ちてゆく月を見ながら「うさぎうさぎ」、夕方に冷たくなってしまった洗濯物を取り入れながら視線を横切るトンボに気づくと「あかとんぼ」、夜になり、外のか細い虫の声が聴こえれば「虫の声」、つい口ずさんでしまいます。 童謡 文部省唱歌「冬景色」は大好きな唱歌の一つ。秋をとばして冬?とお思いでしょうが、実は秋深い頃を表現しています。 さ霧消ゆる湊江(みなとえ)の、舟に白し、朝の霜。 ただ水鳥の声はして、いまだ覚めず、岸の家。(冬景色より) 「霧がかかっていた港の入り江だったのに、霧が消えて、かわりに朝には霜が降るようになった」という意味で、「さ霧(狭霧)」は秋の季語です。つまり、この歌は、冬まっただ中ではなく、冬へ向かい、温度が下がった秋の景色とその雰囲気、そしてその情景から感じる心象を表しています。続く、2番3番にも「麦踏み」、「時雨」、「小春日」などの秋を表現する言葉がちりばめられています。それぞれ麗しい歌詞ですので、ぜひ、聴いてみてください。秋深い様子を「冬景色」という題名で表し、景色の変化から読み取れる季節の移ろいがきめ細やかに表現されていて、心に残る本当に美しい日本語だとおもいます。その空気感や匂いなどを思い起こすことができることも幸せです。 音楽の秋到来。ぜひ、子供の頃を想いだして、唱歌を聴いてみてください。   秋 これからの秋の旅を想い、「旅愁」や「村祭り」が頭の中を巡ります。荷物の準備をして、そろそろ眠りにつこうと思います。

皆様、今夜もぐっすりお休みください。

 

染谷雅子

 

 

ガラス作家・アロマセラピスト 

染谷雅子 ギャラリーはなぶさ https://www.hanabusanipponya.com

作品名:「ステンドグラス Falling Leaves」

染谷雅子のガラス作品「ステンドグラス Falling Leaves」

 

前回記事

パジャマに着替えて…Ones in a Blue Moon