早いもので、今年も師走を迎えました。寒さが一層増し、冬らしくなるこの頃、二十四節気は大雪(たいせつ12月7日)を迎えます。七十二候は、閉塞成冬(そらさむくふゆとなる12月7日~11日頃)、熊蟄穴(くまあなにこもる12月12日~16日頃)、鱖魚群(さけのうおむらがる12月17日~20日頃)と続きます。陽は低く、閉ざされたような雲に覆われる空は、地域によっては本格的な雪を呼び、冬が深くなる中、野山の生き物は冬ごもりを始め、川では産卵の時期を迎えた鮭の群れが、海から故郷へ向かいます。冬の厳しい寒さの中でも、生き物たち、生態系の環はとどまることがないことを表す候となります。
クリスマスや忘年会など、年末に向けて楽しい行事が多くなるこの季節、夜の外出も増える時です。屋内は暖房で暖かくなっていても外気は冷たいので、その温度差に対応できる備えをして、体を冷やさないように注意しましょう。体の冷えが続くと、代謝が落ち、胃腸機能の低下を招きます。その結果、体液や血液の循環が悪くなり、むくみや体重増加へとつながります。冷たい外気に対応できる衣料の調節と同時に、飲み物や食べ物も冷たい物は避け、温かい物を選び、内側からも冷やさないようにすることも大事です。そして、忘年会へ向かう道のりでは少し歩く時間を長くするなど、積極的に身体を動かす機会を作ることも、体内の水の巡りを促し、寒さに負けない身体づくりには大切なことの一つです。
今年もクリスマスを迎える頃となりました。街なかは、11月に入るとすぐに表れ出したクリスマスツリーに加えて、さらに華やかな装飾で彩られ、クリスマス音楽も流れます。併せて、正月への準備や案内などもすべて出揃い、次々と始まる歳末の大売り出し…と、年末準備を控える身はいやが上にも鼓舞されます。年末の大掃除や正月の準備のことなどの計画を立ててはいるものの、思うように事は運ばず、短い一日が過ぎてゆきます。いつもと同じ、一日なのに、12月だと思うとなんとなくせわしなく感じるのはなぜなのでしょう。
師走の由来は、師が忙しく走り回る様子、と言われています。「師馳せ月」(しはせづき)、が変化したとも言われています。では、師とは誰なのかというと、僧侶や、特定の寺院や宗派に属さない独立僧、御師(おんし、おし)です。奈良時代、宝亀五年(774年)に始まり、平安時代には宮中の恒例行事となり、今も続く仏名会(ぶつみょうえ)という行事が十二月にあります。過去・現在・未来の三千仏の名号(みょうごう)を称えることで、その年の罪を懺悔し清めることを祈念すると言われる、仏名会に参加できない人の代わりに、僧侶たちは各寺院で法要を執り行ったのです。年の瀬に、寺から寺へと慌て行く僧侶たちの姿から「師走」と名付けられたとは、なかなか洒落がきいています。
我が家の師走の始まりは、クリスマスの飾りを天袋からおろし、クリスマスツリーや玄関などを飾ることから始まります。子供の頃から母の影響でキリスト教の教えのもとに育ったため、クリスマスは大きな行事です。新約聖書のイエスキリスト生誕の物語はクリスマスのたびに幼稚園や教会学校で降誕劇として芝居を演じ、天使の役だった時や、マリア様になった時もあるし、羊飼いだった時もあり、あ、羊の時もありました。その時々でいろいろな思い出があります。
キリスト降誕の様子をかたどった飾りは、世界各地のキリスト教国で飾られます。ドイツではクリッペ(Krippe)と言います。ウィーンで初めて手に入れた陶器のセットが私の最初の降誕物語です。イタリアではプレゼピオ(Presepio)と言い、ガラスの飾りをプレゼントにいただき、アメリカではネイテビティ(Nativity)と言い、これはプラスチック製ですが、在住時に手に入れました。そして、メキシコではナシミエン(Nasimiento)と呼ばれます。在住時、タラベラ焼きや他の焼き物、ブリキでできたもの、木製のもの、持ち運び用の小さな鋳物など、様々なナシミエンを手に入れました。それらの宝物の中から、その年によって、それぞれを思い出しながら飾るのです。
まあ、そんなことをしていたら、結局時間がかかって、クリスマスの飾りさえ思うように進まない、師走の午後です。結局、もちろん「師」ではありませんが、なんとなく忙しく走り回っているのは私です。 年末の忙しさは、今年のことを思い返し、さらには去年の、または過去のこの雰囲気を思い返しながら、亡くしたものをもう一度思う忙しさかもしれません。今年もありがとう、と。 毎年必ず飾られる降誕物語は、幼稚園時に買ってもらった、馬小屋にイエスが眠る飼い葉桶と天使だけの小さな磁器製のもの。
今年はクリスマスを想うクリスマスにしたいな、なんて思いながら、そろそろ眠りにつきたいと思います。
皆様、今夜もぐっすりお休みください。
染谷雅子
ガラス作家・アロマセラピスト
染谷雅子 ギャラリーはなぶさ https://www.hanabusanipponya.com
作品名:「フュージンググラスのジンジャークッキー」
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