いよいよ冬本番。二十四節気は冬至(とうじ1221)を迎えようとしています。一年で最も昼の時間が短く夜が長い日です。この日を越えるとまた一日ずつ昼の時間が長くなります。七十二候は、乃東生(なつかれくさかれる1221日~25日頃)、麋角解(さわしかのつのおつる1226日~30日頃)、雪下出麦(ゆきわたりてむぎのびる1231日~14日頃)、と続きます。夏に枯れるため、夏枯草(カコソウ)とも呼ばれるウツボグサ(乃東)は、最も寒いこの時期に芽を出し、森の中では木の枝のように立派に育った牡鹿の角が春に生え変わるために落ちる頃となり、雪の下では麦が芽を出すのです。冬の底のような寒さの中でも、生命の引継ぎは確実に進み、春への予感が垣間見られる候となります。

冬の森林 牡鹿

この時期は、これから来る本格的な寒さに備えて体をしっかり作るべき時期となります。体中に力と潤いを行き渡らせ、かつ、体を温める食材を選び、調理法にも工夫が必要です。旬の野菜、ハクサイやダイコンなど、また、体を温める食材としてはブリやニラなどを使った鍋やスープがお勧めです。また、年末年始は飲酒飲食の機会が増える時期でもあるので、飲み過ぎや食べ過ぎには注意です。飲酒は大量のビタミンやミネラルが失われるので、栄養が偏らないよう気をつけましょう。伝統的な正月料理はそんな疲れた身体を癒してくれます。そして、餅は炭水化物が主成分となるため、エネルギー源となると同時に、体を温める作用があるので、胃腸を休めたいときにはぴったりです。ただし、食べ過ぎないように。

餅 エネルギー源 体を温める

冬の真ん中、夜が一番長い日は、同時に春の始まりの日でもあります。寒さはまだまだ厳しくなりますが、日が長くなっていることを感じると、寒さで持ち上がった肩を、ほっと、一息ついておろせる気がします。

冬至には食べるべきと言われている食材があります。まずは、カボチャ。カボチャの黄色は魔除けの色とされていて、カボチャの煮物やカボチャと小豆で作る、カボチャのいとこ煮などが食べられます。小豆も、その赤い色に悪い物を追い払う力があるとして、あずきがゆ、あずきだんご、赤飯などで食べられます。

また、「ん」が2つ付く食材を食べることで、風邪をひかず運がつき出世するといわれることから、「ん」のつく食材:なんきん(かぼちゃ)、れんこん、にんじん、ぎんなん、きんかん、かんてん、うんどん(うどん)などを食べると良いという習慣もあります。

冬至 かぼちゃのいとこ煮

忘れてはいけない果物は、柚子(ユズ)です。平安時代初期に日本に伝わったとみられるユズは、各地に広まり、飛鳥、奈良時代には栽培されていたという記述もあります。ユズは栄養価が高く、健康に良い成分がたくさん含まれています。ビタミンCが豊富に含まれており、抗酸化作用があるため、免疫力を高め風邪の予防や美肌効果が期待できます。特に果皮に多く含まれます。また、こちらも抗酸化作用があるビタミンE:も含まれ、シミやシワの予防、皮膚や血管の老化防止に役立ちます。さらに、腸内環境を整え、便秘予防や血糖値の上昇抑制に効果がある食物繊維、疲労回復や代謝促進に役立つクエン酸、フラボノイドなども含まれ、それらが料理や飲み物で手軽に摂取できる優秀な果物です。特に冬の季節には、ユズ茶やユズポン酢、ユズはちみつなどで楽しむのもおすすめです。

柚蜜 ゆずみつ

そしてやっぱり、冬至のお風呂は柚子湯です。

柚子の皮にはリモネンなどの精油成分や芳香成分が豊富に含まれており、リラックス効果や交感神経を刺激して血流を良くするなどの効果があります。また、抗菌、殺虫、鎮痛作用などのほか、気分を落ち着かせたり、集中力を高めたりする効果もあります。安眠効果もありますので、就寝前のお風呂にぴったりです。理にかなった、冬至の習慣というわけです。

冬至のお風呂 柚子湯

ご近所さんの庭のあの柚の木に、たくさんの実が生ったんですって…、と、前掛けの両裾を持ち上げて作った即席の柚子盛りを私たちに見せて、嬉しそうなある日の母の笑顔を思い出します。その頬は山盛り柚子の反射で明るく、ふんわりと漂う柚子の香りは、冷たい12月の景色にそこだけほわっと暖かくなったようでした。その日のお風呂は柚子がいっぱいゴロゴロと入った気持ちの良いお湯でした。それでも、まだ柚子は残っていて、果汁は柚子ジュースにしていただき、皮は細かく細かく切って、唐辛子と、粗塩で柚子胡椒を作りました。一冬以上たっぷりと、鍋料理や肉料理、魚料理といろいろなものに爽やかな塩味と香りを添えてくれました。

とても簡単にできて、便利に使えますし、保存も利きますので、ユズがたくさん手に入ったら、柚子胡椒作りに少し回して、ぜひお試しください。

ゆずの皮 柚子胡椒

今年も暮れようとしています。家族や友達と集い、思い出話や新しい抱負を語る頃となりました。きっと、あの柚子の日の話もするのだろうな。

そんな時を想いつつ、そろそろ眠りにつこうと思います。

皆様も年末年始と、良い時間をお過ごしください。そして、今夜もぐっすりお休みください。

 

染谷雅子

 

ガラス作家・アロマセラピスト 

染谷雅子 ギャラリーはなぶさ https://www.hanabusanipponya.com

作品名:「ステンドグラス クリスマスツリーの香炉」

染谷雅子 ステンドグラス クリスマスツリーの香炉