2022年春、新たなチャレンジに心躍るも束の間、私は厳しい現実を知ることになりました。
解剖学、生理学、病理学、臨床医学など、まるで医者になるかのような学科に加え、衛生学、リハビリ、関係法規、更には東洋医学、経絡経穴など、「あん摩マッサージ指圧師」の国家試験の科目の多さに驚愕!
果たして、還暦を迎えようとしている自分の脳みそ(よく知る顔を見ても名前が出てこないことも増えてきた)がこのような莫大な勉学の量を受け入れてくれるのか?
初めて聞く、意味を伴わないカタカナ専門用語のオンパレードで、覚えても覚えても記憶から消えていくのです。
通っているのは専門学校の夜間部のため、帰宅は夜11時。土曜日も授業。そして夏休みの短いこと。
でも、自分で選んだ道、今さら後戻りはできません。
サラリーマン、定年退職者、主婦、看護師、鍼灸師、ダブルスクールの大学生、ユーチューバー、中小企業の社長etc. いろんな人たちがそれぞれ志を抱いて、昼間は仕事、夜はクタクタな心身に鞭打って通学する新生活をスタートさせていました。
気づけば高校受験、大学受験の時よりも明らかに勉強している!というか、そうしないとついて行けないのです。
一方、楽しみにしていた実技の授業は週に僅か3コマしかありませんでした。
おそらく、国家試験の合格率を保たないと志願者が減り、学校経営に支障が出るため試験科目の学問が優先なのでしょう。
3年間で極めて高い技術レベルまで到達して卒業後に即開業を計画している自分、どうしたらこの限られた期間で最大限のスキルアップを実現できるのだろうか?
いろいろ考えた結果、「まずは指圧を受けまくろう!」と行動を開始したのです。
当たり前のことですが、「おいしいものを食べたことがない人に、極上の料理は作れない!」「上手な指圧を受けたことがない人に、感動レベルの気持ちいい指圧ができるはずはない!」そう確信した私は、自由になる僅かな時間を割いてはいろいろな先生の指圧を受けて回ることにしました。
そうしてわかってきたことは、達人たちは常に技術向上のための強烈な探究心を持ち合わせ、どん欲に技術を磨き続けているということでした。
年数を重ねることもひとつの要素ではありますが、それ以上に大事な事は高い志を持って技術向上にド真剣に向き合う姿勢なのだと理解しました。
それからは、学校以外でも指圧を学べる場を求めては、なりふり構わず飛び込んでいきました。
そして、熱心な指圧師が集まる研究会などにも潜り込ませていただき(学生の分際にも関わらず受け入れて下さった大先輩方には感謝しかありません)、業界のレジェンドたちと、その指圧に触れる機会に恵まれるようになったのです。
経験量の豊富さは大きな要素ではあるものの、それを補うための最善を尽くすしかない。自分には限られた時間しかない。
普通なら20年30年かかって会得する技術を3年で身につけようとするなら、半端ない探究心を持ち続け、良き師を求め、限られた時間における密度の高い練習が不可欠と考えたからです。
少しでも練習時間を増やそうと、志の高いクラスメートに声をかけ、授業が始まる前の時間や休み時間にも修練を重ねる日々を送ることとなりました。
真剣に取り組めば取り組むほど、指圧の奥深さと、それを探求する楽しさが日に日に増幅していったのです。
この歳でこんなに心がワクワクするものに出会うとは。
いろいろ応援してくださっている方々に、あらためて感謝の気持ちでいっぱいです。
それではまた。