今年も二十四節気の暦を一巡り、最後の節気、大寒(たいかん、だいかん1月20日)を迎えました。名の通り、大きな寒さ、一年で最も寒くなる時期です。七十二候は、款冬華(ふきのはなさく1月20日~24日頃)、水沢腹堅(さわみずこおりつめる1月25日~1月29日)、鶏始乳(にわとりはじめてとやにつく1月30日~2月2日頃)と続きます。寒さの底でも雪の大地を割ってフキノトウは若草色の花芽を現し、気温が最も低くなるこの時期は、流れる沢の水さえも堅い氷となります。一方、昼間の時間は少しずつ長くなり、ニワトリはその温もりを感じて卵を産み始める、そんな、冬と春の入れ替わりが近づく気配に満ちた候となります。
乾燥が気になる季節です。人が過ごしやすい湿度は40%~60%前後と言われます。季節によって変わりますが、冬の快適湿度は50%前後です。例えば東京の場合、最小湿度(一日の最低湿度)25%以下、実効湿度(過去数日間の湿度の履歴を考慮した湿度数値)50%を下回る場合、乾燥注意報が出ます。さて、最近の東京、お天気の良い日は湿度20%台となっています。それはそれは乾燥しているのです。
そこで、部屋の湿度を上げる方法として、
①濡れたタオルや洗濯物を干す、②ルームフレッシュナーなど、霧吹きで空気中に水分を含ませる、③浴室のドアを開ける、④部屋でお湯を沸かしたり、水やお湯を入れた容器を置く、⑤床や窓を水拭きする…、
などの方法があります。また、就寝時に実践したい乾燥対策は、
①マスクをする、②全身の保湿ケアを行う、③コップ一杯分の飲み物を飲む、④寝る向きを考え、口呼吸をしないようにする…、
などの方法があります。生活様式やお好みで、部屋の保湿や就寝時の対策を取り入れて、皮膚や髪、爪、さらには内臓への乾燥を制御しましょう。
空気中の水分が上昇して、雲になり雨や雪になるので、降雨時と同じように降雪時にも湿度は上昇します。ただ、雪の場合は、湿度が低いほど水分の粒が冷やされて溶けにくくなり、雪として降ってくるわけです。雪の結晶の形は、結晶ができるときの気温と大気中の水蒸気の量=湿度の条件で決まるのです。 最近は暖かい冬が多いですし、住宅の形態も違いますので、あまり観察できませんが、小さい頃、雪が降ると窓ガラスの桟の部分に三角形に溜まってゆく雪の結晶を飽きもせず、ずっと眺めていたことを思い出します。ぴたりとガラスに張り付く雪の結晶の形の不思議に見とれたのです。大小はあってもきれいにそろった六角形のいろいろな柄の雪の形の連なりが面白かったのです。六角形のそれぞれの角先がとても尖っていて、棘がたくさんあるものや、同じ形でも角がなだらかなもの、それぞれの角先にさらに冠がついているようなものなど、様々でした。
高校生になって、ある本に出会いました。夏休みの課題図書になっていた「雪に魅せられた人々」という本でした。著者の小林禎作は人工雪の結晶化に成功した気象学者で、雪の研究史にも造詣が深く、本の内容は国内外の雪の美しさに魅せられた人々の物語でした。とくに、雪の結晶の姿を顕微鏡を使い写真撮影に成功した研究者の努力と工夫と、撮影された雪の結晶達の美しい映像にはとても感動したことを憶えています。根性とか努力とか、そういう言葉になんとなく反抗的な気持ちが瞬いてしまうその頃の私にも、人にはその美しさに「魅せられる」という境地があり、そのためにはどんな道も進めるのだ、ということが、すんっ、と心に入ってきたのです。もしかしたら、暑い夏の日に雪の結晶を見たことが効果的だったのかもしれませんが…。
1970年代に発見された「フラクタル」という法則があります。海岸線の長さについての数学の研究から始まった法則ですが、研究が進むにつれ、海岸線のみならず自然の界のあらゆるところに存在する法則だということがわかりました。それは、拡大しても縮小しても規則的に続く図形のことで、例えば、樹木の枝分かれの形や、植物の葉の形、雲の形、山の起伏などに存在する法則です。雪の結晶もそうなのです。あの三角形が重なった六角形のどこまでも続く華やかな連なりは、そんな、自然の法則にのっとって上空かなたで作り上げられ、乾燥した空気に乗ってそっと降りてくるのです。自然って、やっぱりすごい!
スペインで見たガウディの建造物やイスラミックタイルの柄、寺院で見る曼荼羅図…、それらもフラクタルの哲学のもと構築されているものなのです。私も、この世界にいて、地球にいて宇宙にいて銀河にいて…、その外側はどうなっているのでしょう?あ、私の内側は?フラクタルの法則の中で翻弄され、自然構造のひとかけらなんだな、と改めて思う春待つ冬の夜長です。
よし、明日は、カリフラワーの一種、究極のフラクタルと称されるロマネスコでサラダを作って、また私の中にフラクタル?さあ、もう眠りにつきましょう。どんな夢を見るのかしら? 二十四節気一回り、もうすぐ春。また、新しい暦巡りをご一緒しましょう。
皆様、今夜もぐっすりお休みください。
染谷雅子
ガラス作家・アロマセラピスト 染谷雅子
ギャラリーはなぶさ https://www.hanabusanipponya.com
作品名:「ステンドグラスペンダントトップ ゆき」